萌えありきではない



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PS4のRPG。開発はアイディアファクトリー。販売はコンパイルハート。

コンパイルハートのゲームはこれが初めてだったりする。
新規RPGの開発に積極的に取り組んでいる会社で、そのワードは俺の好みだが、ネプテューヌシリーズに代表される同社のRPGから漂う萌えの臭いがハードルを上げる。
萌え自体は別に良い。だけど、萌えを一番前に置いて、単純なキャラの可愛さや馴れ合いで客を釣ろうとしているゲーム。これは嫌いだ。
そういうゲームは避けようとセンサーを光らせているが、たまに搔い潜ってくる事もある。
直近、というほど最近でもないけど、俺がやった中では「よるのないくに」がそれに当たるかな。あれは典型的なキャラ萌えありきのゲームでウンザリだった。
百合という普通とは違った恋愛を描いているのに、感情の共有もないまま恋愛描写だけ押し付けてきて、女の子同士がイチャイチャしていたらお前ら興奮するんだろうという魂胆しか見えない、典型的な薄っぺらで表面的なキャラ萌えゲーだった。ああいうのは勘弁。
やったことが無いので、コンパイルハートのゲームが実際どうなのかは知らない。勝手なイメージでレッテルを貼るのは全くもって良ろしくない。
が、どうしても萌えゴリ押しの印象が拭えない。むしろその筆頭のようなイメージすらある。
そんな中で発表された今回のデスエンドリクエスト。気になる要素が満載だった。舞台はバグにまみれたオンラインゲームの世界。現実世界と行き来しながら、バグを消しつつエンディングを目指す。
うーん、面白そう。ゲームでゲームの世界を体験するというアイディアは好きだし、そのゲームがバグまみれというのが好奇心を動かす。なおかつ現実世界とクロスオーバーするというスケールの大きさも惹かれる。
萌えは目に付くが、それ以上にちゃんとゲームとして面白い事をやろうとしているのが伝わって来る。コンパ製ゲームの事前情報では今まで感じられなかった事だ。
と、なれば話は別。今までのイメージは関係ない。気になったゲームは買う。それが俺のゲーム信条。

と、言うわけで、コンパイルハートのRPGを初めてやったけど、このゲームに関しては萌えありきという感じはしなかった。一番目に付いたのは、RPGとADVを組み合わせたゲーム進行になっていること。
ADVというのは、要するに紙芝居のテキストノベル。これがゲームの半分を占めている。
基本的に自分のタイミングでRPGパートとADVパートを切り替える事ができて、これは今までにない感覚で面白かった。
オンラインゲームが舞台のRPGパート。現実世界が舞台のADVパート。という構成によって2つのジャンルが違和感なく共存しているし、ダンジョン探索中に行き詰まったらそれを解除する手段をADVパートで見つけ出すという、自然な流れで行き来させているのも上手い。二つのパートでの出来事がリンクして相互に作用しあっていると感じさせてくれるのも良い。
RPGとADVを組み合わせるあまり見ないやり方でありながら、無理なく自然に共存しあっているのは良く出来ているなと思う。

戦闘は、基本的には普通のコマンドだが、特定の技は敵を吹っ飛ばすことができ、敵同士をぶつけてダメージを与えたり、仲間や壁にぶつけるとダメージに加えてバウンドが発生して更なる巻き込みが狙えたり、と、何だかどこかで聞いたような光景を目にする事ができる。
どこかって言うと、某引っ張りハンティングなんですけど。某引っ張りハンティングをやったことがない俺ですら、これってモンストじゃね?と思ってしまうくらいにはそんな感じのシステムだった。まぁ引っ張り要素はないけど。
しかし、序盤こそ吹っ飛ばしたり、壁にぶつけたり、というのは重要なダメージソースだが、中盤からは比率的に攻撃やスキルのダメージが圧倒的に多くなるので、ほとんど意味を無さなくなる。
敵を吹っ飛ばすとこで周りのバグオブジェクトを消すことができ、バグを50%以下にしたら特殊なスキルを発動できる、という要素もあるが、このスキルもそこまで戦況を大きく動かすものではないので、吹っ飛ばしを積極的に使いたくなる理由にはならない。
むしろ、このバグオブジェクトによって、自キャラが意図的に触れてキャラの汚染度を上げることで超強い技が使えるグリッジスタイルに突入できるので、そういう意図で処理した方が効率が良い。
戦略的にあまり意味が感じ取れないのは残念だが、吹っ飛ばして、バウンドさせて、敵を巻き込んで、というのは単純に爽快感があるし、雑魚戦でもただコマンドを連打するだけでなく適度に意図を持って行動できるので、良いアクセントにはなっていたと思う。

ストーリーは、うーん、びみょー。どうにも唐突感が否めない。
プレイアブルにも気を使って物語を構築しないとならないのがゲームのストーリーの難しいところだが、デスエンドリクエストにはノベルパートという、一点集中してストーリーを掘り下げられる要素がゲームの半分も占めている。
なのに、何でこんなに唐突なんだろうと思う。無理矢理に場面場面を繋ぎ合わせたようなストーリー展開で、RPGでよくある物語の欠点がもろこのゲームにも現れている。
コープスパーティーの人がシナリオを書いているだけあって、やたらとグロの描写だけは具体的だが、ストーリーの過程に関しては特に終盤はスカスカで置いてけぼりを食らう。
エンディングも唐突。バッドエンドを繰り返してグッドエンディングを目指す、というコンセプト通り、選択肢によってはいきなりバッドエンドでゲームオーバーとなる事がある。
それは良いが、常に選択肢の前でセーブさせてくれよと言いたい。基本的にテキストを読んでる間はいつでもセーブできるのに、何故かたまに保存できないことがある。大抵の場合、バッドエンドが仕込まれた選択肢の付近で起こる。恐らく意図的なものだろう。
意味が分からない。かなり強引にバッドエンドに持っていかれるので、選択肢から推察できる余地はない。つまり運ゲー。
しかもセーブポイントは少ないので、かなり前からやり直しになる。ボス戦前からリセットの場合もある。運ゲーで無理矢理バッドエンドを拝めさせられて、追い打ちのようにやり直しを強制。嫌がらせとしか言いようがない。
俺は最初、セーブポイントでしかセーブが出来ないと思い込んでいて、何度も理不尽にバッドエンドからのやり直しを強制される仕様にイライラしてたが、それをツイッターで愚痴ったらテキストの画面ではいつでもセーブ出来ることを教えて貰えて、ゲーム自体に悪意は無かったんだと気付いた矢先でのこの仕打ち。
バッドエンドなのに直前からやり直せたら死の重みを感じられないじゃん、これはデスエンドを繰り返して最後に最高のエンディングを迎えるというゲームなんだから、バッドエンドである程度ユーザーは苦しんで欲しい、という事なんだろうが、プレイヤーに納得できない形で無理矢理ゲームオーバーにさせられて、更に大幅に巻き戻しは単純に理不尽に感じる。良いやり方とは思わない。

あとはサクサクと書く。
やたらとダンジョンがややこしくて、キーアイテムも色々と探さなければいけないのだが、アイテムアイコンが風景と同化していて凄く見にくい。おかげで見逃しまくった。
ダンジョンはややこしいが、フィールドマップは恐ろしく簡素。冒険している感じは全くない。
またムービーや一枚絵が少なくて状況を把握しづらかったり、ここらへん低予算の苦しさが感じられる。
それを補うためのADVパートの自由切り替えだろうし、そういうアイディアは低予算ならではという感じで凄く良いと思うが、肝心のストーリーが微妙。戦闘も調整不足だし、色々と詰めの甘さを感じる。
しかし、俺がコンパイルハートに抱いていた、萌えばかり重視してゲーム内容はおざなり、というものではなかったし、ゲームとして意欲的な取り組みは目立っていた。
低予算ゆえのクオリティの低さはあるし、調整は甘いし、ストーリーもイマイチだが、ADVとRPGを組み合わせ構成は楽しく、ノベルゲー好きの俺のツボを割と突いたゲームだった。