そのおバカさに、乾杯
ネタばれ注意


"謎の少女、レモンから、特に意味はないけどスパイになれと強要され、特に意味はないけどスパイになった野原しんのすけ。
しかし、レモンと訓練に励んでいたある日、野原一家は謎の組織に拉致されてしまう。
一方、スパイの技術を身につけたしんのすけは、アクション仮面のパワーカプセルを取り戻す為に、悪の博士の研究所へと侵入するのだが・・・”


コナンの映画を見終わったあと、あまりにガッカリして、ヤクルト戦を蹴ってまで映画館に来たのにこれはあんまりだと思い、
ちょうど上映時間が近かったので、クレしんの映画を見に行った。他に気になるのなかったし。
クレしんの映画は一通り見ているが、映画館でのクレヨンしんちゃんはこれが初めて。
流石にこの年でクレしんは羞恥心を感じたし、大学生にもなってクレしんって・・・
と連れにもブーブー言われたが、そこは無理を押し切った。

クレしんの映画は、「ヘンダーランド」「豚の蹄」「大人帝国の逆襲」「戦国大合戦」と、
一部は飛び抜けたクオリティの高さを誇るのだが、全体的にムラがあり、特に最近のは全く中身を思い出せないほど、印象が薄かった。
つい最近テレビでやっていた「オラの花嫁」も、題材は良いけど演出が色々と酷くて、色んな意味で子供向け作品の枠から出ていなかった。
だからまあ、今作もあまり期待せずに見ていたのだが、どういわけだかこれが想像以上に面白かった。
上の4つと比べるとやはり見劣りするが、近年のクレしんの中ではダントツの出来ではないだろうか。

今作のテーマは「家族」。
これは、クレしん映画のいつものパターンとも言えるが、今作は、野原一家だけをクローズアップしているのではなく、レモン一家と対比させ、
分かりやすく、しかし、決してあざとくならないよう上手く見せている。

ご存知、傍若無人な振る舞いで、お下品なことばかりしているしんちゃん。
対する、今作のヒロインである7歳のレモンは、小さい頃からスパイの英才教育を受け、親に反抗することなど許されない、厳しい環境で育った。
そのレモンが、野原一家と触れ合っていくことで、徐々に子供らしさを取り戻し、最後は親に反抗する姿勢を見せる。
ベタベタな展開だが、下手な小細工がない分、シンプルで分かりやすくて良かった。子供にも伝わりやすいだろうしね。
序盤から散りばめられた何気ない台詞が、後で活かされているのもポイント。

クレしんらしいギャグも、もちろん健在。
「スカシペスタン王国」や「ヘガデル博士」は序の口。
最近、めっきりテレビ版では見なくなった、ケツだけ星人も復活し、かなり下品路線のギャグが多くなっている。
それもそのはずで、今作の鍵を握るのは「屁」。
黒幕の野望が、「屁を集めて世界を臭くする」なのが、実に馬鹿馬鹿しくて素晴らしい。
特に、最後のしんちゃんとレモンが、島を飲み込むくらいお腹を膨らませて、屁を出すシーンは爆笑してしまった。
ヒロインにも、こんなお下品なことをやらせてしまうあたりが、流石クレヨンしんちゃん。
最後のケツだけ星人での別れも良かった。あれはしんちゃんにしか出来ない別れの挨拶だよなぁ。

欠点を言うと、スパイとは銘打っているが、アクションはちょっと微妙かな。それらしいことはやっているけど、ハラハラする場面はあまりなかった。
あと、野原一家とカスカベ防衛隊の活躍があまりなかったのも残念だった。
その分、しんちゃんとレモンの活躍が際立っている。

やっぱり、クレしんは良いなー。ここまでお馬鹿で、お下品で、笑えるアニメは中々ないよなー。
序盤は、ちょっとギャグが弱いかなと思って見ていたが、終盤の限界点を振り切った馬鹿馬鹿しさに、笑いが止まらなかった。
展開はベタだが外してないし、演出も悪くなく、オマケにオリジナルキャラのレモンはとても可愛いくて、個人的には大満足の映画だった。
ヤクルトの初勝利は見逃したが、映画館に行ったかいがあった。