分かりにくい




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PS4のアドベンチャーゲーム。開発はヴァニラウェア。

「ドラゴンズクラウン」や「オーディンスフィア」など、2Dグラフィックのスクロールアクション型RPGばかり作っていたヴァニラウェアが突如としてテキスト基軸のアドベンチャーゲームを制作。
始める前はストーリーとゲームの比率は5:5くらいかなーと思ってたけど、8:2だった。完全にストーリーを見せたいだけのゲームだった。

このゲーム、主人公の数がなんと驚きの13人!
しっかり13人個人の視点からストーリーを辿ることができ、ある程度進行の制限はあるが、ザッピング形式で自由にキャラを切り替えながらストーリーを進めていく。
いやいや13人て。どう考えても多すぎだろ。ザッピング式のアドベンチャーゲームはチュンソフトのサウンドノベルを筆頭にそこそこあるが大抵は5人、複雑だった「街」でも8人だった。13人なんてストーリーの把握が難しくなるに決まってる。
そして、結果としてこのゲームのストーリーは非常に分かりにくかった。しかもその原因は主人公が13人もいることだけじゃ無かった。
13人の主人公に加えて「複数の年代を行き来する」「キャラによっては異なる人格や名前を持っている」「知らない固有名詞が説明なしにバンバン飛んでくる」と言った要素まで加わり、ストーリーの飛び散り具合が半端じゃない。同じ主人公でもチャプターが変わると時間軸が飛ぶし、把握するのが非常に困難なストーリー形態になっている。
しかし、この分かりにくさは制作者がわざとやってる。明らかに、これはこのゲームの狙いだ。何故なら、これによってこのゲームのストーリーは考察する楽しさがあるから。
確かに非常に分かりにくい世界観と物語で数分に一回はクエスチョンマークが浮かぶが、謎に対する答えや解釈が他の主人公のルートであっさり明示されていたりして、そうやって断片的な情報を自分の頭の中で繋ぎ合わせて想像を膨らませていく面白味がある。
そしてそれは、能動的にザッピングして情報を集めていけるゲームだからこそできるストーリー手法だと言える。こういうスタイルでゲームの特性を活かした物語は中々ないので斬新だった。
だけど、あんまり俺の趣味じゃないのよね、そういうのは。俺は深読みとか考察とかするタイプじゃなく、キャラに共感したり同情したり反発したりしてストーリーを楽しむ人間だから。
このゲームでは物語の情報を頭の中でまとめるのに必死で、キャラの感情に集中することが出来なかった。
そもそもこのゲームのキャラの行動原理は「愛」にあるのだが、あまりにもそれが一方的すぎて引き込まれない。物語はどこまでいっても他人事なんだから、それを補う納得できるエピソードが欲しかったね。
クリアーまで50時間くらいかかったけど、最後まで全くのめり込めないまま終了。分かりにくい、というだけで謎が謎だと思えないし、ストーリーを純粋に楽しもう、という気持ちになりにくいのが好きじゃない。

ゲームはアドベンチャーパートとシミュレーションパートに分かれる。クリアーまでの50時間のうち40時間くらいがストーリーメインのアドベンチャー。
とはいえアドベンチャーパートもキャラの操作ができるからゲームっぽさはある。ヴァニラウェアお得意の2Dグラフィック、ベルトスクロール型で、相変わらず映像は綺麗だし、味がある。特に夕暮れのシーンはこのゲームの拘りであり、黄金色が美しかった。
また、キャラの動かし方によってストーリーの流れが変わり、例えばあるキャラが教室を出たタイミングで廊下に出ないと進行できないルートがあったりして、ゲーム性っぽいものがあるが、そういう状況観察が求められるのはほんの一部のチャプターだけでガッカリ。
基本的にはアクセスできる部分でボタンを押したり、手に入れたワードを相手に投げ付けて終わり。制作者によると当初はリアルタイム性を取り入れようとしたらしいけど、紆余曲折あって無くなったらしく、その名残りみたいなものが散見される。
また、ザッピングシステムを採用しているが、一本道のストーリーであるため「街」や「428」みたいにあるキャラのチャプターで選んだ選択肢が他のキャラのチャプターに影響して話が変化する、という仕組みはない。
つまるところアドベンチャーの作りは非常にシンプル。ストーリーが難解だから、ゲーム部分は分かりやすくしたんだろうね。

バトルもある。俯瞰視点のマップで次々と現れる敵から機兵に乗って拠点を守るシミュレーション方式の戦闘。リアルタイムで敵は動くが、自分がコマンドを選んでいる間は止まってくれるので取っつきやすい。
大群勢の敵を超火力で薙ぎ払っていくのが快感だし、そこそこ頭を使わないと押し込まれる。攻撃の種類や育成も幅広く、退屈ではなかった。
あくまでオマケの域は出なかったけども。マップは平面だし、シチュエーションの幅も狭い。単調なのは否めなかったね。

主人公のザッピングをガチガチに制限し、特定のチャプターを終わらせないと他のキャラを選択できないようにしてストーリーに連続性を持たせる、というやり方もあったと思う。そうした方が間違いなく分かりやすいし、ストーリーにドラマ性を持たせやすい。
しかしこのゲームは多少の制限はあるものの、プレイヤーが自由にザッピングできるようにし、能動的に情報を集められるようにした。そうすることでユーザーが自分で考えて、物語を想像できるようになった。実にゲーム的で良い。
俺は好きじゃないけどね、このゲーム。考察好きな人には打ってつけだと思いました。