藻掻ききった日記




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・甘え

分かってる。お蝶の動きはもう分かってるんだって。
開始時はクナイを投げてくるからガード。基本相手に攻撃させておいて弾きで体幹を削る。三連撃と三角飛び蹴りのあとにノーガードの瞬間があるから一発入れる。ジャンプしたら手裏剣で撃ち落として、万が一失敗したら危険攻撃に最大警戒で離れておく。空中にいる間は敵の体幹は回復しないので落ち着けば良い。
2段階目が始まったら奥の大仏の近くで待機して降りてきたお蝶を斬る。少しすると幽鬼が出て来るが、厄介なのはお蝶の形代飛ばしなので柱を使って遮るように立ち回る。幽鬼を出してる間もお蝶の体幹は回復するから手裏剣で牽制しておく。あとは一段階目とやることは殆ど変わらない。
もう何十回も死んで、何時間も戦い続けているのだから流石に理解してる。
なのに、どうしても倒せない。なんでなんだ。なぜ勝てないのか自分が分からない。


二段階目突入。
形代に当たって怯んでいるところ幽鬼の猛反撃。死亡。
回生。柱を挟んで戦い、形代が舞ったら柱の裏に隠れる。これでダメージは防げるが・・・うーん、でもなぁ、こんなことやってたら体幹回復しちゃうんだよな。
体幹を半分削ったところで、お蝶は幽鬼を呼び出す。もうこれやめてよー。これされると幽鬼を相手にしている間に体幹をリセットされちゃうんだよー。
だから必死に手裏剣を当てようとする。幽鬼の数が多すぎてロックオンが定まらない。ムキになりすぎて突っ込みが過ぎる。幽鬼の危険攻撃に反応できず死亡。

リトライ。
未だに一段階目すら安定しない。あー、また攻撃しちゃダメなタイミングで攻撃ボタン押しちゃった。死亡。
回生。今度はガードを意識しすぎて体幹が崩されてしまう。そこからは相手の流れ。死亡。

リトライ。
たまに来る下段攻撃に反応できず。死亡。

リトライ。
幽鬼に囲まれたので間合いを取ろうとするが、クナイを投げつけられて餌食に。死亡。

リトライ。
ドーピング作戦開始。飴を使って攻撃力を上げてみる。
焼け石に水だった。死亡。

リトライ。
飴を使って更に防御力も上げてみる。
やっぱり焼け石に水だった。死亡。

リトライ。
一回ロックオンを外して戦ってみるかー。ダークソウルやブラッドボーンもそうだけど、本当に強いやつはロックオン外した方が戦いやすいんだよな。
ロックオンを外した途端、まるで弾きが決まらなくなりこの戦法はダメだと察する。死亡。

リトライ。
あらかた試したけど何も通用しない。どーすりゃ良いんだよ。
また攻撃しちゃいけないタイミングで攻撃してしまい反撃を食らって死亡。なんでなん?なんで俺は何回も同じミスをするの?

リトライ。
あーもう!だから何で三角飛びなんかの発動が大きい攻撃に当たってるんだよ!
どこかでミスが発生する。何回も何回も繰り返しているのに。
体幹というシステムが俺の焦りを誘う。冷静になれない。ここで攻撃しないと、と思ってしまう。これくらいなら大丈夫だろうと思ってしまう。きっと何とかなるだろうと思ってしまう。でもこのゲームはそんな甘えを許してくれない。

リトライ。
どうしても抜け切らない甘え体質。心のどこかで俺はゲームを見下しているのかもな。
敵が飛び上がった瞬間に回復を使ってしまう。そのすぐさま危険攻撃。忍は瓢箪をしまっているところで反応できず。死亡。
もう本当に馬鹿。そこは回復しちゃダメなタイミングだろ。感情で動くな感情で。

リトライ。
時間をかければ、何回も繰り返せば、いつかはクリアーできるだろうと思ってた。
まったく、ブラッドボーンのDLCでルドウィークやローレンスを倒すまでそれぞれ15時間近く戦っていた時から何も成長してないな俺は。あの時、ただ闇雲に繰り返すだけでは到達できないものがあると学んだだろ。ゲームを馬鹿にするな。ましてこれはフロムの作品だ。
集中しろ。真剣になれ。本気でやれ。たかがゲーム。しょせんゲーム。でも、これは俺とフロムの真剣勝負なんだ。


・成長

バトルの開幕はお蝶のクナイ。回避することで若干早く相手に到達できるが、そんなリスクよりも安定してガード。わざわざ弾くなよ、俺。弾いても体幹は削れないぞ。
まずはお蝶に攻撃させる。足でスタンプを決めたところで攻撃が止まった。ここはほぼ確定でダメージ入るタイミング。しかし無理して攻撃を連打しない。一定ダメージ削るまで体幹はすぐに回復してしまう。序盤は消極的で良い。
お蝶がジャンプしたが手裏剣の反応できず。これは予知できなかったから仕方ない。
そして危険攻撃。手裏剣で撃ち落とすか?いや、距離が短いから間に合わない可能性がある。回避だ。反応できないのは仕方ないが、選択を間違って余計なダメージを食らうのは絶対ダメだ。
ジャンプで回避し、間合いを取る。お蝶のクナイ投げはガード。そのあと手裏剣を投げ、攻撃。手裏剣投げのあとは攻撃リーチが伸びるスキルがある。敵の体幹を休ませる隙は極力与えない。
ジャンプしたが、反応できたので手裏剣で撃ち落とす。悩む必要はない。絶好の攻撃タイミングだ。何回かダメージを与えると危険攻撃。いつでもジャンプする準備は出来ている。もうその手は通用しない。
お蝶は左足を上げる時がある。これが大抵の場合攻撃の始動。それが見えたら攻撃の途中でもガードに意識を持っていく。
お蝶の体幹は崩壊寸前。しかし焦るな。攻撃しなくても弾けば体幹は削れる。感情に囚われるな。勝ちに拘るな。冷静に最適解を選べ。
お蝶の攻撃を弾き、ようやく体勢を崩す。忍殺。まずは半分。
倒れたあと幻術を使って消えるが、出現する場所は分かってる。奥の大仏の前。そこにスタンバイし、現れたところを数回攻撃。
そのあと指パッチンで幽鬼が次々と湧いて出てくる。無理をしない。どうせお蝶が全部消してくれる。
お蝶が指パッチンをし、幽鬼は光の粒子となる。それが次々と忍に向かって放たれる。柱の裏に隠れても角度によっては当たるので確実なのは横ジャンプ。一定の間合いを取ることに注意すれば楽勝で回避できる。
ステージ2からは、お蝶との剣戟時に幻術の形代飛ばしが混じるのが厄介。形代が消えるまで攻撃しないよう自制する。
追い込まれてからのお蝶の攻撃は明らかに激しい。隙は少ないが、ジャンプ時に手裏剣で確実に落としてダメージを与えておく。
相手の体幹の回復速度が落ちる段階まで体力を削った。ここからが本番である。
お蝶の下段攻撃。ジャンプで回避。この時、うまくやれば敵の頭を踏み付けて体幹を大きく削れる。リスクも少ないし、やらない手はない。
いよいよ戦いは佳境に。お蝶の体幹は残り2割。しかしこっちの体力も風前の灯。回復はない。回生もない。だけど、もう負けるわけにはいかない。
途端に俺の心臓が唸りだす。相変わらずのチキンハートな俺。かれこれお蝶と4時間は戦っている。勝てば報われるが負けたらまた・・・
ゲームを一時停止して落ち着く。ソウルシリーズでは無かったが、隻狼は戦いを一時中断できる。良い試みだ。心臓がもたない。
時間をたっぷり取って気持ちを落ち着けたはずが、再開した途端にまた鼓動が早まる。落ち着け。あと数回弾いて攻撃するだけだ。そんなこと今まで何回もやってきただろ。
お蝶の攻撃の手が止まらない。気のせいか、弾いても弾いても体幹ゲージが全然伸びてない気がする。まだか。まだなのか。
ようやく手が止まってお蝶がジャンプ。しかし絶好のタイミングなのに手裏剣を投げられない俺。そして危険攻撃。反応が一瞬遅れる。ヤバい。死ぬ気でジャンプボタンを押せ。
ギリギリ間に合ってかわす。降りきたところを攻撃。敵は弾いたが、ついに体勢を崩した。忍の攻撃は止まらない。大きく胸がガラ空きになったところを突き刺す。
膝をついたところ更に追撃。斬りつけながら回転し、背後に回る。そしてトドメに背中から思いっきり貫く。

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「お蝶殿・・・御免」

「腕を上げたね・・・狼」

忍のことをせがれ殿としか呼ばなかったお蝶は、最期に彼を狼と認めて散った。


・狼と御子

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燃え盛る仏殿。お蝶を倒した狼は、背後から赤い刃で貫かれ、倒れてしまう。

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そのまま仏殿と共に瓦礫の底に沈むかと思われたが、誰かが助けに来た。御子である。

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「私のため、そなたは戦ってくれた。捨て置くことなどできるか。狼よ、我が血と共に生きてくれ・・・」

狼は3年前の記憶から目を覚ます。まだ彼の戦いは終わらない。葦名の城で大切な人が助けを待っている。

終わり。