貪欲





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PS4とXbox Oneのアクションゲーム。開発はUBIソフト。

シリーズが進むにつれて暗殺者としてのアサシンクリードはボヤけていき、ステルスゲームとして形骸化されつつあるこのシリーズ。
大作ゲームだから誰でも楽しめるように調整しているんだろうけど、隠密がメインなのかコンバットがメインなのか中途半端で、何を面白さの中心として捉えたら良いのかよく分からなくて全くのめり込めないんだよね。
中世ヨーロッパの街並みを究極に再現した映像のクオリティとその世界を縦横無尽に駆け回れるパルクールアクションは軽快だから、観光ゲームとして見れば最高なのは間違いないが、最初だけ映像凄いなーと感じたあとはゲームとして特別な体験があるわけでもなくすぐに飽きてやめてしまうのがいつものパターン。
今作も事前の情報を見てると色んな要素を詰め込んでいて、また取り留めのないゲームになっていることが予測されるが、あまりにも詰め込みっぷりが凄いので買ってしまった。

なんというか、このゲームの面白さに対する貪欲さは凄かった。
ウィッチャーのようにムービーをふんだんに使って選択肢もたくさん取り込み印象的に演出して見せてくれるストーリー、シャドウオブモルドールのように時と場面関係なく執拗に邪魔をしてくる特別な敵の存在やそのエリアで主人公が存在感を高めることで領主の力を弱めることができるインタラクティブ性、ゴーストリコンのように枝葉のクエストをこなしていくことで最終的にターゲットの討伐に挑戦できるようになる多重ミッション構成、ダークソウルのようにパリィや回避を意識したコンバットシステム、更にはアサクリ4のような海戦もあったり、なんかいきなり世界観が変わってゴッドオブウォーみたいな神話のモンスターと戦ったりと、あらゆるAAAゲームの人気要素が詰め込まれていて、何だか凄い事になっていた。大作ゲームのオールスターでも開催されているかのような状態。
特にクエスト時のムービーは、人間が演技をしたり演出を加えたりして印象的に話を見せてくれるので、このシリーズの弱点であった単調さを大きく軽減していて非常に良い試み。

一方で、このゲームでしか体験できない面白さ、というものはない。
他の大作ゲームでメインとして据えられているような要素が大量に存在するし、いずれも金をかけているだけあってクオリティは低くないが、本家に及ぶほどではなくオリジナリティには成り得ていない。
もともと独自性が低いシリーズではあるが、唯一、アサシンクリード特有の魅力と言える圧倒的な街並みのクオリティとその世界を自由に駆け回れるパルクールに関しては今作あまり力が入っておらず、余計にこのゲームならではという部分を感じにくい。
結局、このゲームで味わえる面白さとは他のゲームでも体験できる面白さであり、俺みたいなあらゆるゲームに手を出しているオタクからすると、その面白さにちゃんと特化して作られた本家をやれば良いじゃんという気持ちにもなる。実際、最初はそう思ってた。
しかし、他のゲームではメインを張っている要素を、決して低くないクオリティでここまでの規模で詰め込まれているのを見ると、参ったと言わざるを得ない。
一つのシステムに特化して作った方が濃い面白さが作れるし、それは印象的なゲーム体験になるだろうが、人を選んでしまうのは間違いない。
クリエイターなら自分にしか作れない面白さを求めがちだが、そんな面倒なオリジナリティは顧みず、面白いと分かっているものを根こそぎ詰め込んでいるこのゲームの割り切りっぷりは凄い。節操なく人気の要素をパクっているだけとも言えるが、独自性を無視してここまで面白さに対して貪欲さを見せているゲームも多くない。
確かに一つ一つの要素として見れば薄っぺらいところもあるし、新鮮さもないが、面白いものを作るためなら何でもして見せるというこのゲームは、次々と新しいコンテンツが目の前に現れて、次はどのような体験をさせてくれるのだろうとワクワクさせてくれる。あらゆるAAAタイトルの要素を詰め込んだ大作ゲームの集大成的な内容には圧倒されるばかり。
まさに資本力にもの言わせたゲームで、このコンテンツ量と、あらゆる要素をそれなりのクオリティで詰め込んでしまうこのゲームの大ボリューム感は凄じく、面白さに対する一途な姿勢は、これぞ大作ゲームでありこれぞエンターテイメントとも言える。

でも、今年一番の大作ゲームであるレッドデッドリデンプション2が発売されて、俺はアサクリと同時に進めていくつもりだったが、同作とは違って一部の方向に特化し強烈なインパクトを放っているRDR2のあとにこのゲームをやると体験が薄っぺらく感じられて、一気にやる気が無くなってしまった。
結局、特別になれるゲームではないよね。