個人的



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PS4とスイッチとXbox Oneのアドベンチャーゲーム。開発はwhite owls。

レッドシーズプロファイルやD4を制作したSWERY氏の新作。ちょっと前に、スパイダーマンは全然面白くない!と言って少し話題になった人。
彼の感想については完全に個人によるものだから俺の触れるところではないにしても、じゃあお宅のゲームはどうなん?と思ってしまうのが当然の流れである。
かたや巨大な予算を投資して人気キャラクターを主人公にした超大作ゲーム。かたやちょっと名の知れたクリエイターが少ない人数と予算で作ったインディーズゲーム。
でも、そんな単純な比較はできないからエンタメは面白い。誰もがスパイダーマンを絶賛している中でSWERY氏が酷評しているように、面白さは固定化されたものではなく、人によって形を変えるのだから。

まずもって、自分を痛め付けながらパズルを解いていく、というこのゲームのシステムは新しい。
千切れた腕や脚を重りにしたり、頭だけになって狭い隙間を転がり抜けたり、炎を身体に纏って行く手を阻む障害を燃やしたり、首の骨を180度曲げて世界を反転させたり、など、主人公自身の身体を傷付けないとこのゲームは先に進めないようになっている。
これがパズルゲームとして結構良く出来ていて、難易度も程々で面白かった。あの隙間通れないから回転カッターで下半身ちょん切ってくるかーとか、このゲームでしか出来ない発想。
仕掛けにしても、単純に痛め付ければ良いわけではなく、ある程度は身体の状態を保つ必要があるのもメリハリが効いている。
収集要素も豊富で、テクニックと思考がより深く求められるので本筋だけでは物足りないという人も満足できるようになっている。

自身の身体を欠損させることをテーマにしたゲームと言えば、数年前にコナミがネバーデッドという不死身の男を主人公にしたアクションゲームを出していたが、あれとはテーマの意味合いが大きく違う。
ネバーデッドは全体的にコミカルな雰囲気を醸し出し、傷付ける行為も自分から率先して行うのではなく相手の攻撃や周囲の環境変化によって仕方なく発生してしまうものだったが、このゲームは自ら積極的に自傷行為をする事が求められる。
コミカルさなど全くない。首の骨が折れたら鈍い嫌な音が響くし、下半身が千切れたら内臓を引きずるし、自身の身体が燃えれば耳を切り裂くような金切り声を上げて主人公は走り回る。非常に重苦しく深刻に、自分の身体を傷付けるという様子を見せている。
このゲームが優れているのは、傷付けるという行為を、単なるそういう世界観だから、雰囲気だから、というのはでなく、ストーリーとしてちゃんと結び付けていること。と言うより、ストーリーがあって、このシステムと世界観が出来上がった、と言った方が正しいだろう。
プレイヤーが求められる行動とストーリーが一体となっているので、話に臨場感はある。ゲームならでは手法でストーリーを見せる事ができていた。
しかし、その行動に至った経緯が極めて主観的なものなので、そこに共感できるかどうかが全てな気はする。俺はあまり出来なかったが、人によっては感動できる話だと思う。

なるほどね、SWERY氏は極めて個人的なゲームを作ったわけだ。
個人的なものになればなるほど、理解してくれる人間は少なくなるが、ある人にとってはまるで自分のために作られたゲームのように感じ取れて大いに感動することができる。
スパイダーマンの方が間違いなく評価する人間は多いだろうが、賛否両論は別れてももしかするとこのゲームの方が心に残った人間の比率は高いかも知れない。
まぁでも、スパイダーマンの方が分かりやすく面白いし、誰かに勧めるなら間違いなくスパイダーマンだと言うけどね。