リアルじゃないから、リアリティがある



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PS4とPS2のアクションRPG。開発はサイバーコネクトツー。

3部作+1章からなる.hack//G.U.がPS4で一つのパッケージになってリマスター。とりあえず第1章をクリアー。
このゲーム、とにかくサクサク動く。アクションがサクサク。ゲーム進行がサクサク。クリアーまでサクサク。

まず、移動が速い。初めてキャラを動かした時はあまりにシャカシャカ動いてビックリした。それでいてワープ装置がそこら中に設置されてたり、バイクにも乗れたりするので、とにかく移動がサクサクで苦にならない。
目標地点もマークしてくれるから分かりやすいし、バックログも細やかで回想を見れば今何をしていたかすぐに思い出すことができる。迷うことは一切なかった。

次に、ゲームシステムが非常に単純で、バランス調整もゆるい。
複雑な操作は一切求められないし、クリアーするだけならテクニックや反射神経もそれほど必要ない。
ノックバックが強いので守りは重要だが、いつでもアクションをキャンセルできる上にガードは全方位対応、加えて自キャラが攻撃を受けて怯んでいる途中でも入力が効くので、ボタンを連打しながらでも余裕で対応できる。
基本攻撃のボタンは一つだけで、ディレイやコンボと言った要素もなく、連打か溜めの2パターンという超シンプル仕様。もう一つ、スキルトリガーという攻撃手段があるが、スキルの選択時は時間が止まるのでゆっくり考えることができる。
レベル補正が強いのである程度のレベル上げは必要になるけど、とにかく簡単なアクションなので、詰まることはまずない。

分かりやすい目標と言い、素早い移動と言い、チョロいアクションと言い、とにかくスムーズにゲームが進行するのが特徴で、テンポは凄く良い。
逆に言うと全く歯応えがないので、ゲームとしてどうかと問われたら、退屈だとしか言いようがない。はっきり言って、ゲームとしてはあんまり面白くない。
だけど、実際のところそんなことは気にならなかったりする。だって、このゲームの最大の魅力は世界観とストーリーにあるから。単調なゲーム部分を補ってあまりあるほどストーリーが面白い。

このゲームの舞台は、ゲーム。主人公はオンラインゲーム「THE WORLD」でハセヲと名乗り、日々活動を続けていた。という設定。
第1章の段階では、ストーリー上ではプレイヤーどころか現実世界の描写もなく、リアルの生活を匂わせるような台詞も殆どないし、主人公のハセヲを中心に全編オンラインの世界が舞台となって、擬似世界がまるで現実のようにしてストーリーが展開される。ここら辺、第二の人生とも呼ばれるネトゲの特徴がそのまま現れている。
今でこそソードアートオンラインのようなネットゲームと現実の境界が曖昧な作品は多いけど、hackは初代の発売が2002年。海外は分からないが、日本ではまだFF11が発売したばかりで、MMOのジャンルがそれほど一般的でない時代にこういう世界観を作れるとは中々の先見性がある。
と、思いながら色々調べてたんだけど、初代の脚本はアヴァロンの人か。アヴァロンは2001年公開のSF映画で、仮想現実として作られたオンラインゲームを舞台にリアルの曖昧性を描いていた。
確かによく考えたらあの映画で使われていた用語が結構引用されてるな。成る程、あそこが出発点だったわけか。
しかし、.hackの最大の特徴は、ゲームという媒体でその世界観を表現していることだ。
FFもドラクエも、他のゲームも、そのゲームの中で生きるキャラクターから見ればそこはリアルな世界であるが、プレイヤーから見ればゲームの世界に過ぎない。そこには現実とゲームの絶対の壁があり、物語に入り込むうえで障害となる一つの要因でもある。
しかし、.hackの世界観は言葉通りゲームとして表現されている。だから違和感がない。奇抜な衣装も、超人的なアクションも、ポリゴンのカクカクCGも、作りもの感満載のダンジョンも、ゲームの世界だからそれが当たり前のものとして認識できる。
他のゲームなら、現実離れした現象をこれはファンタジーだから、と一旦割り切る必要があるが、hackはその必要がない。だってゲームの世界だから。リアルな世界じゃないからこそ、リアリティがある。まるでTHE WORLDを遊んでいるプレイヤーのように、シームレスにその世界に入り込むことができる。だから物語に臨場感がある。
面白いのが、THE WORLDからログアウトしてパソコンのHOME画面に戻ったり、そこでBBSやメールやニュースを確認できたりすること。ゲームの外の世界を表現することで、ネットでゲームをしているという雰囲気が出ている。良い工夫だ。
メールを確認することでストーリーが進行したり、BBSに攻略情報やダンジョンのパスワードが載っていたりと、この世界観を活かした遊びも豊富で面白い。
段々といちいちログアウトするのが面倒になってくるけど、これがこのゲームの味であり、世界観を際立たせている。

ストーリーは王道だがネトゲという世界観でコーティングされているので独自の表現が満載で、新鮮味がある。
特に、ゲームを始めたばかりの頃の主人公がプレイヤーキルされた恨みでプレイヤーキラーを倒すことが生き甲斐となり、死の恐怖という厨二な異名が付くまでに成長したけど、とあるキャラにハックまがいの不正をされてレベルが1になっちゃった、という序盤の展開は面白かった。
何より上で言ったように、このゲームは臨場感がある。仮想現実のオンラインゲームを遊んでいるプレイヤーという視点に立てるから、まるで自分が主人公のように物語に入り込める。
それもあって、熱は凄かった。ストーリーが熱い展開なのは勿論だが、ゲームと一体になったような、そんな心地良さがある。

いやー、想像以上にアクションはつまらなかったけど、想像以上にストーリーが面白かったな。
やっぱり、リアリティのある世界観は熱量が違うね。ゲームという媒体はプレイヤーに操作させる必要があるから物語を作りにくいけど、主人公と一体になれるゲームだからこそできることもある。主人公の怒りや悲しみが、ダイレクトに伝わってきた。
とにかく先が気になる。さっさと次をやろう。