納得の完結編。納得できない決着。



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3DSのアドベンチャーゲーム。開発はカプコン。

19世紀が舞台となった大逆転裁判、堂々の完結編。
逆転裁判と言えば、裁判で矛盾を突いていくシステムが中心のゲームであり、昔はストーリーよりも事件を解いていくという方向性が強く、章仕立てではあるが、1話完結に近い内容だった。
しかし、5の頃からストーリー性が強くなっていく。それまでも単体の物語として見れば充分にドラマを感じられる仕上がりだったが、最近は特に章ごとの繋がりを重視していて、さり気無く伏線を残し、それを重ねてどんどん話を膨らませていくという、壮大な物語が語られるようになった。
そして、大逆転裁判は、その流れを相当に突き詰めてみせた。2作合わせて全10章、全てが一つの物語に繋がっている。
前作の大逆転裁判が大量の謎を残し中途半端に終わって次に続くとなった時は、事前に2部作という情報が明かされてなかった事もあって、おいおいマジかよとなったが、その思いは完全に覆された。
次々に明かされる謎。どんでん返しに次ぐどんでん返し。勢揃いするキャラクター。そして最後の異様な盛り上がり。
バレバレの謎も多いし、こじつけもかなり強いが、それでも全ての流れが収束した終盤の怒涛の展開は心踊るものがあった。一つのゴールに向かって一貫として物語が描かれるカタルシスが詰まった、大満足の完結編だ。

しかし、テーマに対する決着のつけ方が、俺は気に入らない。
最近の逆転裁判はメッセージ性がかなり強いが、今作も当然そこは強固で、真の正義とは何か、というテーマが根底にあり、そのテーマは前作から引き継いでいる。
例えば、逆転裁判は、割と大きな矛盾を抱えたゲームだ。主人公は、裁判は真実を明らかにする場所である、と常々言っていながら、依頼人の事は盲目的に信じ抜いている。
依頼人を最後まで信じる、というのは逆転裁判の信念であるが、じゃあ本当にその依頼人が犯人だったらどうするの?という疑問は常に付きまとっていた。
エンターテイメントだから、と言われればそれまでだが、依頼人が全員冤罪というご都合主義じゃないと成立しないテーマなんて、はっきり言って嘘くさい。早くそこに向き合ってくれよ、と思っていたが、逆転はこの点に関してエンタメだからという甘えに逃げ続けていた。
だけど、前作の大逆転裁判はついにやってくれたんだよな。まぁそこまで本気でやってるわけじゃないけど、少なからず今までのモヤモヤを吹き飛ばしてくれた。弁護士の正義は何か、ちゃんと伝わってくるものがあった。

大逆転2に話を戻す。
最後のクライマックスの場面。またしても主人公は問われる。高らかに主張される、闇に対抗するための闇。真実を突きつければ、大英帝国の司法システム及び秩序は完全に崩壊してしまう。
真実を取るか。今の平和を取るか。弁護士として、裁判として、何かを裁く司法として、本当に大切な事は何か。
正直、黒幕の言うことは一理ある。主人公が一体どういう言葉と意思を見せて、納得のいく決着を付けてくれるのだろうとドキドキしながらその時を待っていた。
・・・が、何だよあのやり込め方は。いやー、そうじゃないだろ。この場面は。大逆転裁判のテーマを本物にするための、最も大切な場面で、あんな終わり方はない。そこはトリッキーな力技で強引に解決するのではなく、堂々と言葉で納得させてくれないと。ガッカリ。ガッカリだよ!

2作合わせて70時間の超ボリューム。いやー、長かったなぁ。思ったより前作の内容を覚えていて良かった。
かなりクリアーまでに時間がかかったけど、最近、逆転裁判はあまり一気にプレイできないんだよね。基本的に俺はストーリーが気になるとどんどん読み進めないと気が済まないタイプだけど、逆転は裁判やら証拠探しやらで話の流れが止まるから、勢いを削がれる。
まぁそれを言ってしまったら逆転裁判自体が成り立たなくなるので、仕方ないが。裁判というシステムがあるから逆転裁判のストーリーは臨場感溢れていて、物語に感動できるわけだからな。
大逆転裁判は、根底にあるテーマの決着のつけ方は気に入らなかったが、ストーリーやキャラの繋がり、という意味では納得の完結編だった。
前作の大逆転裁判をプレイ済みなら、やっぱり買わないとね。