理想的なシリーズ最新作



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PS4とPS3のRPG。開発はアトラス。

・ペルソナではいつものことだが、学園アドベンチャー的なタイムスケジュールをRPGに組み込んでいるのが面白い。
好感度上げや自分磨きが学園体験として楽しいだけでなく、RPGパートの攻略に繋がっていて素晴らしい。キャラの好感度を上げていくと、どんどん出来ることが増えて攻略の幅が広がっていく。
例えば、政治家の好感度を上げれば大量の金を悪魔から巻き上げる交渉術が身に付き、金にものを言わせたパワープレイをすることができる。
例えば、コーヒー店主の好感度を上げればスキルを使うのに必要なSP回復のアイテムを製造することができ、バトルでガンガン強力な技を使っていくことができる。
直接仲間として戦わないNPCも多くいるが、一人一人の結び付きが、主人公の力になっている構図はとても粋に感じる。
このように、好感度はイベントだけでなく、攻略のアプローチが一変するほど大きな役割を担っている。当然、どのキャラにコミュニケーションしていくかはプレイヤーの自由。プレイヤー独自の相関図と戦い方を構築していける幅広さがとても面白い。

タイムスケジュールがあるということは、リミットもある。目標を決められた日付までにクリアーしなければならない。
何も考えず自由気ままに高校生活を謳歌しているとダンジョン攻略時にかなり苦戦を強いられるので、ある程度意識して日常を過ごす必要がある。面倒に思う事もあるが、ここがペルソナの面白いところであり、RPGとして優れている所以だ。
時間が有限であるため、初見で全てのキャラと仲を深めたり、主人公のスペックをオールMAXにするのは困難だ。もちろん、全てのイベントを見る事は難しい。
軸となるストーリーは固定だが、プレイヤーによって主人公の高校生活は千差万別あるわけだ。思い出は、それぞれ違う。そこには個性があり、つまるところそれは、プレイヤー自身が主人公であるという臨場感だ。
スカイリムやフォールアウトとは全くやり方が違うが、実に日本的なやり方で、アトラスはロールプレイングシミュレーターを完成させた。

・ダンジョンが劇的に進化。前作までは何の仕掛けもないランダムダンジョンを潜るだけだったが、今作はギミックに脇道に立体的な構造とこれでもかと詰め込まれている。
また、主人公達が怪盗であるという設定を活かし、壁に張り付いたり、背後から強襲したりといったステルスちっくな行動ができるのも面白い。
シンボルエンカウントとの遭遇をスタイリッシュに立ち回れて見栄えるし、裏を取って奇襲しやすいから能動的にエンカウントしようという気持ちになる。雑魚戦がストレスにならない。

ゴールまでの道のりは非常に長い。ここで問題になるのがSP回復のアイテムが希少であること。回復や強力な技をガンガン使ってると途中で息切れする。SPが尽き果て満身創痍になりながら、チェックポイントはまだか、まだなのか、とドキドキしながら進む感覚が堪らなかった。
しかし、チェックポイントに行けば体力やSPが補充されるわけではない。ただ街に戻れるだけだ。その日はそのままベッドに直行し、1日が終わる。当然、そのダンジョンをクリアーするまで潜り続ける必要があり、その分日数を無駄にする。手間取るほど、キャラとコミュニケーションを取る時間がどんどんなくなっていく。タイムリミットも迫ってくる。
だから、ちゃんと準備をしてからダンジョンに行こうという気持ちになる。一回一回の戦闘でも、如何に効率良く敵を倒していくか、と意識するようになる。満身創痍でも、まだ大丈夫、まだ行ける、と、ギリギリを攻めて潜り続けたくなる。
行動の一つ一つを意識する必要があり、常に緊張感と駆け引きがあるこのゲームバランスは素晴らしいの一言。本当に面白い。
今までのペルソナはダンジョン攻略が死ぬほど退屈だったが、今作は大満足。

・戦闘も相変わらず面白い。いつも通り弱点を突いて怯ませるともう一度攻撃できるプレスターンが非常に強力なのだが、今作は全ての敵を怯ませると更に追加で大ダメージを与えられる。しかもステルスを活かせばほぼ先制攻撃可能。
おかげで雑魚戦は非常にテンポが良いのだが、それを加速させているのがインターフェース。
○ボタン=通常攻撃、△ボタン=スキル、□ボタン=アイテム等、カーソル操作せずワンボタンで行動が起こせる。また、R1ボタンを押すと弱点攻撃を勝手に選択してくれる。慣れてくるとリズムゲームのような感覚でパッパッと戦闘をこなせる。
非常に小気味が良く、何百回と繰り返す雑魚戦も全く苦痛に感じなかった。

・悪魔を集めたり合体させるシステムはもちろん健在。
プレスターンの戦闘システムはレベルよりも属性耐性の方が遥かに重要となるので、どういう系統の悪魔を集めれば良いか、また合体して作れば良いか、と目的が見出しやすくて良い。ダンジョンを進め、敵と戦い、苦戦したら悪魔集めや合体を繰り返して再挑戦、という流れは実にアトラスRPGらしい楽しみ。
でも、今作はアトラスにしてはあんまり難しくなかったな。ゴリ押しで進めるほど緩くはないけど、敵が強くてどうしようもない!ということはほぼなかった。ボスも弱かったし。
まぁ時間制限があって詰んでしまう可能性があるから、敵の強さは抑え目にしたんだろうね。その代わりSP管理の必要性を作って難易度を上げたと。ペルソナのゲームシステムに噛み合った合理的なバランス調整だと思う。

・ストーリーも面白かった。根っからの悪党が相手であるが、人の心を勝手に操るという非人道的なやり方で世直しする主人公たち。
序盤から中盤にかけて、あえて主人公たちの一方的な正義を強調して見せているのが良い。高校生らしく無邪気で、浅はか。力に溺れ、酔っている。が、後半から一気にひっくり返される。挫折を味わい、本当に大事なことは何か、彼らは気付いていく。
二転三転する展開に魅せられるし、弱さをちゃんと描いてるから感情移入しやすい。
人生は心の持ちよう次第というテーマも、ゲームの設定と結び付けることでプレイヤーの歩みとしてダイレクトに伝わって来る。

・超オシャレ。もうめっちゃオシャレ。
映像がオシャレ。音楽がオシャレ。オープニングがオシャレ。敵へのトドメがオシャレ。ロードの切り替わりがオシャレ。メニュー画面がオシャレ。装備の変更がオシャレ。買い物がオシャレ。もうありとあらゆる場面がオシャレまみれ。
かと言って見にくかったりテンポを崩すこともあまりない。ただただ良い意味でオシャレで素晴らしい。

・ボリュームが常軌を逸してる。クリアーまでに90時間以上かかった。やり込み抜きでクリアーまでにここまで時間がかかったゲームは初めて。

文句無しに傑作だったな。クリアーまで90時間もかかったのに、全くダレなかった。とにかく内容が濃い。どんだけ詰め込んでるんだってレベル。
前作までの不満点、ストーリーのショボさやバランス調整の甘さやペラペラのダンジョンは全部改善。今までは学園アドベンチャーのオマケに矮小化した女神転生が付いて来るような内容だったが、今作はアドベンチャーとRPGが完璧なまでに融合している。さらに怪盗という新しい試みも見事に活きてるんだから凄い。
それにしてもダンジョンの劇的な進化っぷりにビビった。ペラペラの自動生成ダンジョンでお茶を濁していた今までは何だったんだってレベル。時間とお金をかければ面白いものが生まれるわけじゃないが、ペルソナ5はふんだんにリソースを注ぎ込む事によって今までより作り込めるようになり、見事に傑作となった。
それもこれも、ユーザーがペルソナというゲームを支持して、規模を大きくしても採算が取れるという見込みがあったからだな。理想的な成長を遂げているシリーズだ。
面白いから売れる。売れるから予算をかけられる。予算をかけられるからより良いものができる。良いものだから更に売れる。
素晴らしいサイクルじゃないか。全てのゲームがそうあると良いんだけど。それが当たり前にならないのが、商売の世界か。まして絶賛縮小中の日本のコンシューマー業界だもんな。そんな中で、ペルソナは良いものを見せてくれた。
めでたくシリーズ最高売り上げを大幅に更新した今作。もっと予算をかけた次のペルソナはどうなるんだろ。クリアーまで150時間とか?それは勘弁だな。