色々とショボいがアイディアは光ってる




2014-09-04-01-13-24


PS3とPSVITAのRPG。開発はランカース。

マスなどで区切られてはいないが行動の制限が強く、ジャンルとしてはSRPG色が強い。SRPGとしては珍しく3D空間の中でキャラをグリグリ動かせるタイプで、なんとなく戦場のヴァルキュリアを彷彿とさせる。
しかし、せっかく3Dとして作っているのに、映像が見栄えなかったり、マップの作りに工夫がなかったり、攻撃のリーチがいい加減だったりと、あまり3Dの恩恵を感じない出来栄えで、戦場のヴァルキュリアを果てしなくショボくしたようなゲームだなぁというのが序盤の印象だった。
ところが、暴走システムがスリル満点で面白かった。これは攻撃を受けたりスキルを使ったりすると減少していくSANITYが許容値を超えると発動する状態で、攻撃力は大幅に上昇するがプレイヤーの入力を受け付けず敵味方見境いなく攻撃するようになり、これだけなら敵の近くで発動させればデメリットは殆どないので面白味が薄いが、一人が暴走状態になると他の仲間もSANITY減少値が上昇してしまうのがミソ。下手すると連鎖的に暴走が発生し収拾が付かないことになる。
このリスクとリターンが極端なバランス調整がとてもスリリングで、窮地の状態から一発逆転したり、逆に一気に追い詰められたりと、戦局が大きく動く感覚が堪らない。もうダメだ!ってところで暴走が発動し運良く大技を発動してくれて大逆転勝利した時はしばらく興奮が冷めやまらなかった。基本的にSRPGはじっくりジワジワ詰めていくタイプのゲームだが、このゲームはどんでん返しがかなりの頻度で起こる。
それを可能としているのが絶妙なゲームバランス。一ターンの差で勝敗が付いたことは一度や二度ではない。毎回最初はこんなの無理だろ・・・って思うところから始まるが、頑張っているうちに何とかなってしまう。土壇場の逆転劇も何回もあった。逆に楽勝だと思ったらちょっとの油断から一気に詰められてやられてしまう。常に手に汗握るギリギリすぎるバトルのおかげで熱中度は高い。

もう一つ大きな特徴が仲間の中に裏切り者がいるという設定。節目ごとにジャッジメントルームに集められ仲間間の投票で一番票の多いキャラは消去される。
裏切り者かどうかの判断材料は戦闘終了時に聞こえる仲間のノイズで、戦闘に参加させたキャラのみそのノイズが聞こえるため、色々な仲間を使う動機付けにもなっていて良い仕組み。
使いやすいキャラが裏切り者だと気付いた時はかなりの絶望感だが、わざと見逃して潔白のキャラに票が集まるよう誘導できるのがまた面白い。
消去されたキャラは結晶となり、それを装備すればそのキャラのスキルが使えるようになったり、新たなスキルが解放されたりと、ジャッジメントのシステムは単なる犯人探しでないところまで及んでいて工夫されているなぁと感じる。もちろん、裏切り者を全員当てたか否かでストーリーは大きく変わる。

ただねぇ。これ、どんなに頑張っても一周目はトゥルーエンドに到達出来ないんだよね。なのにレベルや装備の引き継ぎなしで周回させられるんだよね。初見だとあのギリギリな戦いは面白いけど、それをもう一回やれと言われるとウンザリとしか言いようがないんだよね。たまにフリーズもするし。ストーリーが周回の目的になるのは明白なんだから楽させて欲しい。俺は結局一周だけしてやめた。
でも普通に終わるとストーリーが投げっ放しすぎるので全く釈然としない。裏切り者の動機も謎すぎるし。誰か動画アップしてくれないかなー。お、youtubeに上げてくれてる人いるじゃん。どれどれ。
うん、真エンドを見るのと見ないのとではだいぶ感想が変わるね。結構良い終わり方だった。ジャッジメントシステムをストーリーの重要な仕掛けの部分に絡めていて統一性がある。ゲームシステムを話の大事なところで結び付けている作品はやっぱり熱くなれるな。これなら自分の手でトゥルーエンドを見届けたかったなぁ。惜しい事をした。

映像はショボいし、世界観はそこまで奇抜でないし、今流行りの遊びを取り入れているわけでもなく、そこまでキャラクターに引きがあるわけでもない。
でも、今時珍しいくらい、ゲームのアイディアで真っ向から勝負していて好感が持てる。フリューがこういうゲームを作ってくれるとは意外だった。
技術や資金が乏しくても、ノウハウがなくても、アイディアがあって、コンセプトに向かって必死こいて作れば、面白いゲームは生まれるということが良く分かる好例。そういうゲームはスマホやダウンロードゲームの環境と相性が良いのでそっちに殆ど流れたと思ったが、まだコンシューマのパッケージでも出てくる余地があったんだなぁ。全然売れなかったからこの道は更に細くなりそうだけど。
周回の仕様以外は満足。