PS3の苦難




これまでは自分の経験の視点から語ってきたけど、今回はPS3の置かれた状況から見つめて書いていく。

2008年。バーンアウトパラダイスとCODで満足しきっていた俺をよそに、PS3はかなり危うい状況に立たされていた。
DVD需要と初代プレイステーションの勢いをそのまま引き継いでコアユーザーとライトユーザーをまとめて引き込み、それに伴い豊富でバラエティに富んだソフトが集まった、普及台数的にもソフトラインナップ的にも最強ハードだったPS2。その後継機であるPS3は成功を約束されていたはずだったが、初期のアホみたいに高い値段設定と高級感を押し出したイメージ戦略のせいでライトユーザーは一気に離れ、キャッチーで斬新な遊びをアピールした任天堂の体感ゲーム機にこぞって流れてしまったた。
更に時代は携帯機全盛。DSの大成功により市場は据え置きから携帯機へと完全にシフト。開発費が膨大にかかり売り上げも普及台数的に見込めないと踏まれたPS3にサードパーティのリソースが割かれることはなく、ソフトラインナップはスカスカ状態。
それでも正統のナンバリングタイトルは本格派の据え置きでのリリースを求める声が多く、一番普及していたWiiは性能的にも操作性的にも変化球すぎるためオーソドックスな進化という意味で難しいし、順当に性能をパワーアップさせたPS3がその役目を果たすかと思われたが、日本普及を睨むマイクロソフトが資金援助によってサードの支持を集め、更に開発がPS3に比べて容易だったこともあってXbox360に日本向けのHDゲームは集まり、拠り所だったコアユーザーの心もPS3から離れつつあった。
実際、当時のPS3は趣向が似通っていたXbox360と比べて勝っている部分がオンラインが無料で遊べることとスケジュールにFF13の予定があることくらいしかなく(そのFF13も後にXbox360で発売される)、ソフトラインナップは日本のゲームとRPGを多く取り揃えた360の方が圧倒的に魅力的だったし、マルチタイトルでもPS3よりパフォーマンスが良かったり先に発売するソフトが多かった。
この頃はネットのどこを見てもPS3はダメハード、ゲーマーなら360を買えという風潮が強くて、SCEに対する風当たりは相当厳しいものがあった。元々ゲームハードはプロレスの対象になりやすく、栄華を誇ったPS、PS2から一気に転落したSCEは格好の的だったのだろう。
ライトユーザーには見捨てられ、頼みのコアユーザーは360に傾き、ハードの花形であるソフトラインナップは改善される兆しが一向に見えず、最大のキラーソフトFF13は全く音沙汰がない。完全に八方塞がりである。しかしPS3にはまだあのゲームがあった。


『メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』

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WiiFITや脳トレなどの体感ゲームが世の中を圧巻し、ゲーム市場は据え置きから携帯機、コアゲームよりカジュアルへと流れ、従来の大作路線が人々の心に響かなくなってスペック重視のPS3の存在意義が危ぶまれていた中発売されたメタルギアソリッド4の存在はとてつもなく重かった。
ゲーマーをPS3に引き込む牽引役としてはもちろんだが、PS3の性能の凄さとリッチなゲーム体験の価値をユーザーに知らしめる役目を一身に背負わされていた。本作のキャッチコピーである「ゲームの逆襲が始まる」は、MGS4の置かれた立場が如実に表されている。普通ならファーストのSCEが自らゲームを作ってその責務を果たさなければならないはずだが、それをサードパーティに丸投げする辺り実にSCEらしい。
しかしMGSは立場上キラーソフトとしての責任を押し付けられたが本来その器ではなく、元々ストーリーありきのゲームであるこのシリーズは小島監督の拘りが極めて強いため初見のユーザーに対して一切の配慮がない、俺のファンだけ付いて来いと言わんばかりのかなり尖ったゲームだった。具体的にどう尖っているのかと言うと、ムービーがやたら長い、世界観の設定が必要以上にややこしい、という点が挙げられる。
しかもMGS4は一応ソリッドシリーズの完結編とされた集大成であり、余計にその側面が暴走していた。結果として、ムービーだけやたら膨大でゲームとして遊べる部分は全体の3分の1程度となっていて今まで以上に見るゲームと化しており、ムービーだけで10時間近くあるというとんでもないことになっていた。ピータージャクソンでもこんなに長く撮らないぞ。
PS3待望の大作としてMGSシリーズをやったこともないのに熱に乗せられて購入した俺はあまりのムービーの長さに唖然。しかもそのムービーで語られていることの半分も理解できず肝心のストーリーに全く付いていけない。ここまでファン以外は置いてけぼりのゲームを何十億とかけて作るなんて凄すぎるぜ小島監督と戦慄した。
しかし映像と音響の質は間違いなく最高クラスのクオリティ。明確な距離感が伝わってくる環境音によって戦場のスケールと臨場感がダイレクトに感じ取れたし、今では当たり前の技術になっているがムービーからシームレスにプレイアブルへ繋がる演出は初めての体験で大変興奮させられ、背景に合わせて細かく変色するカメレオンスーツの先進的なテクノロジーにも感動しきりだった。テレビをブラウン管から液晶に新調して初めてプレイしたゲームだったこともあり、本作の次世代感は凄いものがあった。PS3の性能の凄さを伝えるという役目は見事に果たしたと言って良い。
ステルスの側面で見ると紛争のどさくさに紛れて潜入するというのが面白い。銃撃戦で気を取られている間にすり抜けたり砲撃による煙に紛れたりと周りの環境を利用した隠密は、紛争地域の臨場感が肌で感じ取れると共にオクトカムスーツの保護色を使ったステルスシステムを最大限活かしている。
オクトカムスーツとは背景に合わせてタコのように自動で変色するスーツで、本作のキモ。MGS3でもコスチュームによる擬態システムを採用していたが、あれは敵が索敵に集中しているためどれだけカモフラージュ率が高くても近くで視界に入ってしまうと発見されてしまった。
一方MGS4の舞台は紛争地域。敵は争いに夢中で擬態のカモフラージュに惑わされまくり。気付かずに真横を走り去っていくのがとても愉快だし、戦闘状態であることを利用して目と鼻の先をコッソリ進むシチュエーションはバレるかもしれないという緊張感と目の前にいるのに気付いてないでやーんのという高揚感が入り混じって何とも言えない興奮があった。まさにどさくさに紛れて潜入しているという感じだ。前作はまだまだ未完成感が漂うカモフラージュシステムだったが、本作でついに完成されたと言って良い。
また、テクノロジーの進歩が感じ取れるのも素晴らしい。1970年代を舞台にしたMGS3のカモフラージュは背景に合わせてコスチュームを着替える必要がありその度に一々メニューを開いての操作が求められたが、2014年の世界が舞台でハードをPS3に移したMGS4のカモフラージュは背景に合わせて自動でスーツが変色するようになり、3から続けてプレイした人はその快適性とハイテク化に、ハードの進化とゲーム内のテクノロジーの変化が両方感じ取れる演出になっている。
システムの中にリアリティを取り入れるのは小島監督らしい拘りで、コスチュームの仕様以外にもMGS3では時代の年代に合わせてあえて2よりレーダーの機能を落としたり、怪我の種類に合わせて特定の医療道具を使わせたりと、システムと世界観をリンクさせることでストーリーを乖離したものにせず、長いムービーがあっても持続させるだけの没入感を生み出していた。MGSがストーリーありきで作られているというのはこういうことだ。
とにかく、カモフラージュを活用したどさくさステルスはかなり未来的で面白いのだが、残念ながらそのパートが楽しめるのは第1章と第2章の一部だけ。第3章以降は殆どムービーで占められている上にプレイアブルはとって付けたようなステルスと単調なボス戦しかなくて退屈極まりなかった。
ストーリーはファンサービスに溢れていたのでシリーズ経験者は満足だろうが、普及台数の割には異様なくらいに売れたことからこれしかない需要で買った俺のようなにわかユーザーも多く、当時はムービーゲームービーゲー言われてかなり叩かれていた気がする。
後にシリーズは全部プレイして、元からこういうゲームなんだなと分かったが、前の話を知れば知るほど4のシナリオが陳腐に見えて仕方なくなるという現象が発生。広げすぎた設定を無理矢理まとめようとしすぎたよね。


『白騎士物語 古の鼓動』

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MGSの発売が6月で白騎士物語が12月。かなり間が空いたがこの頃は受験が近付いていて俺自身ゲームどころではなかったし、PS3のソフトにしても空白と言って良いくらいに空気だったので特に問題はないと思う。
PS3に欠けているものは色々あったが、決定的に欠けていたのはRPGだった。とにかくRPGが不足していた。日本人はRPGが大好きなのでこれは由々しき事態だ。
しかしHDゲームはただでさえ開発が難しいのにRPGとなるとボリュームが求められるため更に作業量が増えてしまい簡単に作れるものではなかった。
だがFF13はいつまで経っても情報がないし、ライバルのXbox360がRPGを連発している中、いい加減PS3も何か出さないとマズイだろという空気になったところで出たのがこれ。
どこかのお城のお姫様が攫われてたまたま現場にいた青年とその他諸々が姫様を探すための冒険に出るという清々しいまでの王道展開で、王道RPGに飢えて餓死寸前だったPS3ユーザーは見事に食いついた。RPG好きである俺も食い付き欠けたが受験直前だったので我慢した。我慢して正解だった。
結局プレイしたのは1作目が収録された続編を購入してから。映像は綺麗だし、ロードなしに建物に入れるのは快適だし、シームレスな戦闘も楽だし、次世代機RPGの片鱗は至る所にかいま見えて、形としては悪くなかったが、技術力ではカバーしきれない部分、センスを問われる部分で問題がありまくりだった。恐ろしく単調でメリハリのないゲームバランス、不親切すぎるインターフェース、魅力がなさすぎるキャラクター、そしてあまりにもあんまりなストーリー。
ガワはそこそこだが核となるものが弱すぎるという、何をモチベーションに楽しめば良いのか分からないことになっていて、とりあえず酷すぎるストーリーが一体どこに着地するのかという点だけに注目して死んだ魚のような目をしながらプレイしていた。
ところが死んだのは俺の目ではなくPS3だったのだから堪らない。ラスボス直前というタイミングでフリーズしそのままイエローランプが発動。完全に頭が停止した状態でプレイしていたのでフリーズしたことにもしばらく気付かず、PS3が壊れたと分かって一番最初に思ったのが、あぁもうこのゲームをしなくても良いんだな、ということで、正直このあと続編をやるのも苦痛だったので良いタイミングで壊れてくれたと言える。
良い面を探すとすれば、このゲームにはオンラインで他のプレイヤーと一緒にミッションをこなせる仕組みがあり、俺は少ししかやってないので何とも言えないが本編はチュートリアルと言われていることからもオンラインゲーとしてなら価値が見出せるのかもしれない。


続く