いつも通り面倒くさいが面白い




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WIIUとGCのアクションアドベンチャーゲーム。開発は任天堂。HD版をプレイ。

ゲームキューブで発売された風のタクトがHDとなって復活。
風タクと言えばカートゥーングラフィックとそれに合わせたキャラクターデザインが特徴であり、HD化されるとどうなるか興味深かったが、実際見てみると明らかにHD以上の恩恵を受けているというか、オリジナル版は色のベタ塗りという感じがあったがHD版では光の質感を絶妙に取り入れており、ファンタジーを意識した世界に現実味のある空気が感じられて凄かった。特に海原や青空の透き通り具合は尋常じゃなく、軽く感動を覚えるほど美しい。
本作の軸はその海原を駆け巡る冒険であり、大航海ならではの楽しみが詰まっている。どこまでも広がる澄み渡った大海原の光景、大砲を使っての海戦、突発的に起こる竜巻、海に沈んだ宝のサルベージ、そして島を見つけて上陸する時のワクワク感。相変わらずこのシリーズの探索は発見と驚きに溢れていて冒険している気分にさせてくれる。
仕込まれているイベントの数も相当なもの。ただ会話の繰り返しで済むようなものではなく、そこから一工夫必要なのが面白いところで、ご褒美が実利的なのとあいまってやる気が起こる。
また、イベントや寄り道の要素をチェック表やクリアー率のような形で記録しないことで自発的に楽しめるよう促しているのも上手い。チェック表を示されるとそれを埋めることが目的になって作業になりがちだが、やりたい奴だけやれば良いという懐の広さのおかげで変な強迫観念に縛られず、純粋にイベントが楽しめる。
作り込みと作業を作業と感じさせない工夫はいつも通り素晴らしい。

が、いつも通り面倒くさい。どこが、と言うより、とにかく全体として面倒くさい。全般的に任天堂のゲームは遊びやすさを重視しているくせにどうも快適さとなると後回しというかわざとそうしている感じがあり、特にゼルダの伝説は嫌らしいほど面倒なことを押し付けてくるのが伝統であるが、今作も相変わらずだった。
とにもかくにもウザったいのが海上の移動。遅い。遅すぎる。どう考えても海の広さと船のスピードが合っていない。それだけならまだしも、船の方角を変える度に風の流れをタクトの力で変えなければならないのがまた面倒で、一々テンポが悪い。クリアーしてから倍速で走れたり風の流れを自動で調整してくれるアイテムが存在することに気付いたが、あるなら最初から分かりやすく手に入るようにしとけよと言わざるを得ない。
結果的に長い間海の上を漂うことになったのだが、終盤になると新しい発見も尽きてくるし、同じところを行ったり来たりさせられるので退屈極まりない。たまに宝箱が海底にあることを表す渦が現れたりもするが、何故か近付くと渦が消えて音だけで位置の判断を求められ、しかも少しでもズレたらサルベージは成功しない嫌らしさで、やっと成功したと思ったら殆どの宝箱の中身は50ルピーだし、本当にイライラさせてくれる。
イライラが頂点に達したのは仲間との協力が必須なダンジョンに赴いた時。この仲間が最高に融通が効かなくて実に愉快。具体的に言うと、付いて来るスピードが遅い、飛ぶしか能がないくせにほんのちょっとした段差に引っかかって助けを乞う、少しでも扉から離れていると次のエリアについて来ない、何故かストップの指示が出せない、すぐにマジックハンドに連れ去られて行方不明になる、など、足手まといを極めた木偶の坊っぷり。ただでさえ面倒くさいダンジョンが、仲間が加わることによって悪い意味で強化されていた。よりにもよって難易度の高い終盤の2つのダンジョンが仲間必須なのだからタチが悪い。
謎解きもパズルを解くというよりはただ面倒な作業を求められるだけのが多くてしかも失敗したら最初からやり直しというパターンが目立ったし、敵に関しても何かやたらくどくて何回倒されたら気が済むんだという感じ。
これらのことから、どうもプロセスが複雑で面倒ならそれを越えたあとの達成感は向上するだろうという考えありきで作られているような気がしてならない。その典型がトライフォース集めにおける、金と労力を費やして地図を解読し目標の場所に辿り着いたと思ったらまた地図が出て来たでござる×3なのだが、流石にHD版ではそこは簡易化されていた。
そうなんだよね、HD版はこれでも大分調整が入ってるらしいんだよね。俺はゲームキューブ版をやったことがないからどこまで快適になったのか分からないけど、タブレットのインターフェースはかなり大きな改善点だと思う。
ゼルダは毎回インターフェースが複雑で、アイテムが多いくせに3つしか同時に装備できなかったり地図を一々開くのが面倒だったりするのだが、今回は地図を見ながら移動できるし、アイテムも一々ゲームを止めずに入れ替えできるのでかなり快適。タクト操作時にメロディをタブレットの画面で確認できるのも素晴らしい。
HD版からの要素である、WIIUの掲示板式コミュニティ、ミーバースと連動した仕掛けも面白い。これは瓶にメッセージを書いて海に投げ入れることでミーバースにその内容が投稿されるというもの。海に他のプレイヤーが流した瓶が漂っていることがあり、拾うとそれを流したプレイヤーの書いたメッセージや写真を見たりすることもできる。
ただ、返事を書いたり貰った返事を確認するには一々ゲームを止めてミーバースに入らなければならないのは一旦ゲームの世界から引き戻されるので残念。ゲーム内でコミュニケーションを完結する方法を考えて欲しかったなと思う。

ストーリーはどうでも良かった。思い出したように最後に詰め込んで物語っぽく見せているが基本的には無きに等しい。宿敵のガノンドロフが「僕にも譲れないものがあるんだよー」と喚いていたが、とりあえず悪役にも悪役なりの正義を持たせとけば物語が深く見えるだろうという適当な付け足しであることが丸分かりで、いっそのこと分かりやすい悪役にしてくれと思わざる得なかった。

まとめると、作り込みが凄くて、イベントと一部の謎解きが面白くて、あとはひたすらに面倒くさいことだけが印象に残るという、いつものゼルダだった。
航海による冒険は島の発見が楽しかったのでとりあえずは満足だが、海賊の撃破やサルベージによってパーツや素材を集め、それを元に船をカスタマイズできたりしたら、退屈なだけの移動にも面白さが出ただろうになぁと思うと残念に思うところもある。あの移動速度とか成長要素として徐々にスピードアップできるようにすれば良いのにと思わざるを得ない。
でも、HD版の映像はオリジナルにも増して凄いインパクトだし、この映像を動かせるだけでも楽しいので、WIIU持ちならオススメ。