オタク魂が溢れてる




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“深海に生じた次元の裂け目より現れた怪獣に対抗するため、人類は二人組の兵士が乗り込んで操縦する巨大ロボット「イェーガー」を開発。
イェーガーの活躍は目覚ましく人類は優勢に立つが、怪獣の出現ペースを落ちることなくむしろ増していき、徐々に地球は疲弊していった。”

素晴らしいまでに無内容でストーリーとか設定とか本当にいい加減さが目立つが、ロボットのかっちょ良さの前にはそんなこと何の問題にもならなかった。
パシフィックリムに出てくるロボットはクールじゃない。スタイリッシュでもない。ぶっちゃけデザインはダサいし、戦い方も地味だし、変形もしない。なのに、凄まじいときめきを感じる。
外観を一切気にしていない戦闘の為だけに作られたような無骨なデザイン。主な攻撃手段はパンチというたくましさ。そしてここぞというタイミングで飛び出す必殺のブレード。
カッコ良い。心からそう思う。ロボットにおいて、デザインの格好良さなど無意味だと気付かされる。ロボットがロボットたらしめる要素は至ってシンプルだ。「巨大な金属の塊が動く」たったこれだけで良い。本作のロボットはそれだけを忠実に表現しており、ロボットの醍醐味が凝縮されている。
逆にコクピット部分はシンプルさとはかけ離れた難解な作りだが、ロボットの動きとパイロットの動きがシンクロするという操縦方法は人間とロボットが一緒に戦っている感じがあって熱い。ロボットはただの兵器でなく、仲間であり、友達だもんな。

そしてそんなロボットと戦う相手が怪獣とくるんだからもう堪らない。ロボットは常に強敵と戦うべき存在だ。ウルトラマンやゴジラに親しんできた日本人からしてみれば、怪獣ほどその役割に当てはまったものはいないだろう。
ロボットと怪獣の頂上決戦。このシチュエーションに胸が踊らないわけがない。怪獣のデザインがまたゴジラに登場するやつのグロさとウルトラマンに出てくるやつのチャーミングさを足して割ったような感じで実に怪獣っぽくて良い。監督は相当な日本オタクらしいが、本当に随所にツボを付いてくる場面が散りばめられていて感動させられる。恐らくウルトラマンを参考にしているであろう、ロボットと怪獣の取っ組み合いはまさに純粋な力と力のぶつかり合いがダイレクトに伝わってきて震えが止まらない。必殺のパンチであるロケットパンチのネーミングセンスはあんまりだが、何故かその単純さに子供心をくすぐられて興奮してしまう。

しかし、最後のグダグダっぷりは酷い。カテゴリーMAX(怪獣の危険度を現す単位)の怪物が現れた!これはヤバい!という展開までは最高に熱いが、ついに姿を現したそいつのデザインは今まで出て来た種類と殆ど変わらないし、カメラがやたらと引いていて全然大きさが伝わってこなかったし、何もすることなくあっさり散ってしまって、全然ラスボスという感じがしなかった。
力のぶつかり合いを表現しているロボットと怪獣の戦闘や、さっさと出しとけよと突っ込まざるを得ないブレードの登場タイミング、わざと出し惜しみしてタメにタメてから登場する最強のロボットなど、あらゆる面において分かってるとしか言いようのない演出に満ちているのだが、最後の最後、一番見せ場を求められる部分だけ何故こんなに投げやりなのか。ここは本当に残念。

日本人好みのガジェット、演出、シチュエーションを、ハリウッドの潤沢な資本力と監督のオタク魂をフル回転させて作られた本作は、クオリティもさることながら、パチモンではない本物の愛に満ちていて、ロボットオタク、怪獣オタクなら絶対に観るべき作品に仕上がっている。これは映画館で観なきゃ絶対にソン。