お金は人を突き動かす




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3DSのネットストアで配信中のミニゲーム。開発は任天堂。

トスバッティングやノックなどの野球が元となっている10種類のゲームで構成されたミニゲーム集。それぞれ有料であるのだが、購入方法がとてもユニーク。
ストア内でゲームを購入するのではなく、子連れおっさん犬が経営しているスポーツ店でゲームカセットを購入すると遊べるミニゲームが増えていく形になっていて、店主がゲームの説明をしてくれたり、貧乏で子供を養う金がないから買ってくれとせがんできたりと、無機質になりがちな購入手続きがとても賑やか。
そして何と言っても最大の特筆事項は値引きができることで、ゲームを買うには当然実際のお金が必要となるのだが、このゲームは店主との値引き交渉やクーポン券を使うことで元々400円で売られているゲームをどんどん安くすることができるという、かなり大胆な仕組みを取り入れている。しかも生半可ではなく、最大で半額以下の値段になるのだから相当大きい。
更に巧妙なのが、クーポンや値引き交渉に必要なアイテムの入手方法。ミニゲームのお題を解いていくことで溜まるスタンプに応じて手に入るため、実際のお金がかかっているだけに単調なミニゲームもかなり熱を入れてプレイしてしまう。クーポンが手に入るとつい使いたくなってしまう。俺はこの流れにまんまと乗せられて二つほどミニゲームを購入してしまった。
要するに、このゲームにおいてはお金を払うという要素が面白さのキモを握っているわけだ。課金という行為をゲームのアイディアとして結び付けてくるとは実に任天堂らしいやり方。まさかビジネスを遊びに仕立てあげるとはね。任天堂は無機質なものを遊びに変えるのが本当に上手い。値引きと言ってもピーキーではなく、スタンプはどんどん溜まるので簡単にクーポンやアイテムは手に入るし、交渉も何度でもやり直せるし、値引きの余地がある場合は伝えてくれるなど、積極的に値引きできるように働きかけてくれてここら辺の配慮も実に任天堂らしい。
肝心なミニゲームの内容も簡単操作と明快なルールとテンポの良さを兼ね備えていて爽快感という意味ではかなりのもの。何よりクーポンという実益が伴った褒美があるからモチベーションが上がる。ボリュームもかなりのもので、元々の値段である400円の価値は充分あると思う。
ちなみに俺のお気に入りは審判になってストライクボールを判定するミニゲーム。普段野球を見ている時に判定に対してボロクソ言っているが、実際やってみるとこれがかなり難しく、ゲームでこれだけ難しいのだから現実はもっと大変なのだろうなと、審判の方々の苦労が身をもって分かった。

お金は人の感情を劇的に動かす。ゲームをプレイするにおいて、金を払うという行為がモチベーションを占めている部分は多いにあり、自分自身、せっかく高い金を払って買ったんだからと思いながらゲームをプレイしている気持ちは正直ある。
お金の存在がモチベーションを高めるのであれば、いわゆるソーシャルゲームの仕組みは、ビジネス的にもユーザーの意欲を満たすという点でも確かに理にかなっているのだろう。そうだと分かっていながらも頑なにソーシャルに手を出さず、純粋にゲームとしての面白さで勝負してビジネスをしようとする任天堂のスタンスはとても理想に溢れていて美しく、明らかに時代の流れを見誤っていて儚い。
誰でも安心して遊べるように健全で、そして面白く。任天堂がゲームに対して抱いている信念は紛れもなく本物だ。課金でさえ面白くしようとする姿勢は感動的ですらある。任天堂の気概を感じ取る為だけでもこのゲームをやる価値はある。