いつものヴァニラ




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PS3とPSvitaの2DアクションRPG。開発はヴァニラウェア。

開発しているのがヴァニラなのでもはや言う必要もないと思うが、映像のクオリティがべらぼうに凄い。古今東西含めても、ドラゴンズクラウンの2Dグラフィックは間違いなく最高品質。
しかもその映像クオリティで、キャラやモンスターがモリモリ動く。本当に良く動く。魔法の表現も実に鮮やか。
王道な世界観も良い。騎士、ゴブリン、ドラゴン、魔法使い、仲間が集う酒場、などなど、あまりにも直球でファンタジー好きの心を突いてくる。
いつものヴァニラなら映像と世界観だけ良くてあとはおざなりというパターンが待っているが、今作はアクションも悪くない。キャラの動きは実に軽快でサクサク。アクションの種類はまぁまぁ多いし、コンボもどんどん決まる。ボス戦はアクションだけ求められるのではなく、一工夫必要なのも面白い。
ゲームの流れとしては、ダンジョンに潜って奥のボスを倒し、街に戻って装備を整える、という形になっている。このゲームはハクスラの側面も強く、ダンジョンの中でアイテムがザクザク手に入るが、ダンジョン内ではそのアイテムを使ったり装備したりできないのはメリハリを生むという意味では素晴らしい。ダンジョンではあくまで探索と戦闘に集中させるというわけだ。これによって街に戻った時の安心感がより強まる。一つのダンジョンは15分もあれば終わり、ダンジョンを攻略して、街で装備を整えて、またダンジョンに潜るというテンポの良いサイクルは単純明快故にかなりの熱中度を生む。
その熱中度をさらに高めてくれるのがオンライン。ロビーに入って誰かと待ち合わせるというようなシステムちっくな仕組みはあえて排除して、ダンジョンの途中でランダムに誰かと出会うという形になっており、雰囲気を削ぐわないよう考えられている。マッチングがランダムな上に、ボイスチャットやテキストチャットといったツールは用意されておらずコミュニケーションを取る事はできないので後腐れなくオンラインを楽しめる。せっかく出会った仲間と分岐でそれぞれ違う道を選ぶとその場で別れてしまうというのはこのオンライン仕様だからこその仕組みで、見事に旅の途中で出会っただけに過ぎない薄く緩い仲間の関係性を表現している。

しかし、飽きる。クリアーした途端にどうでも良くなる。別にやる事がないわけじゃない。クリアーすればハードモードが解放されるし、新たなボスも登場する。それに合わせてキャラのレベル上限は引き上げられ、強い装備も手に入るようになる。ハクスラの醍醐味は、どんどん強くなる敵に対して自分もどんどん強化して数値のインフレを楽しむことにあるので、むしろ本番はここからである。それにこのゲームはオンラインに対応しているので他のプレイヤーと協力することだって出来る。普通に考えればそう簡単にはダレないはずだ。
なのに、それを邪魔してくるのがあまりにもあんまりなクソ仕様の数々。
このゲームは6種類のキャラクターが用意されており、盾を使える騎士、肉弾型のドワーフ、魔法を扱うソーサラー、弓で遠距離攻撃できるエルフなど、それぞれ個性がある。ここでネックとなるのが、この特性が職業として用意されているのではなく、キャラクターとして表されていること。つまり、一人のキャラクターが特性を付け替えていくという形ではなく、それぞれの特性がキャラクターとして独立している。故に、ドラクエのように一人のキャラクターがいくつもの特性を掛け持ちできない。恐らくこの仕様はキャラクターのユニークな造形を強調するためなのだろう。確かにアマゾンやソーサレスのキャラ造形は目を見張るものがある。
だが、違う職業に変えると新たなキャラクターを作った扱いとなるので、レベルは1からやり直しだし、ストーリーやクエストも最初から。唯一アイテムだけは共通だが、レベルによる使用上限があるので意味がない。ただでさえゲーム内容は単調なのにキャラを変えるとまた一からやり直しというのはあまりにも面倒すぎる。こういう仕様にするならキャラクター毎に違うストーリーを用意するといった飽きさせない工夫が必要なのにそれもない。しかもオンラインができるのは中盤からなので協力プレイで気を紛らわすことすら不可。かと言って、一つのキャラクターを使い続けていても同じことの繰り返しなので飽きる。結果としてもう良いやとなってやめてしまう。飽きさせない工夫どころか、積極的にモチベーションを奪ってくるのはどういうことだ。

更にゲームとして致命的なのが、画面がごちゃごちゃしすぎて何がどうなっているのかさっぱり分からないこと。映像は確かに綺麗だが、それはアート面での話であって、ゲームとして重要なのは如何にプレイヤーに画面情報を分かりやすく伝えるかであり、特にアクションはそれが重要なのに、このゲームはそれがまるで考えられていない。すぐにキャラクターを見失ってしまう。ただでさえラインの奥行きとか分かりにくいのに、こんな状態で細かいヒットアンドアウェイなんて不可能。ただボタンを適当に連打しているだけだった。

と言うわけで、映像や雰囲気は良いが、ゲームとしてはまるでダメといういつものヴァニラだった。
アクションはそれなりだが、この画面の見にくさは致命的。ハクスラも面白いのに、何回もやり直しさせるクソ仕様のせいでやる気をなくす。映像とキャラクター先行で作るとまぁこうなるわな。
スタッフが「自分がやりたいゲームを作った」とインタビューで答えていた通り、かなり製作者の自己満足が強い作品。自己満足という名の拘りこそが、作品にパワーを与えるのでそれは多いに結構なのだが、映像やキャラクターを優先したせいでゲームがダメになるという構図は、俺は好きになれない。映像が綺麗なだけのゲームとはまさにこれのこと。古き良きと呼ばれる類のゲームを最新技術で作り上げた結果がこうなるとは、皮肉なものだね。