ホラーっぽい雰囲気を出してるだけで全然怖くないバイオ




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PS3とXbox360とWiiUのアドベンチャーゲーム。開発はトーセ。

今作の主な舞台となるのは捨てられた幽霊船で、船の中という閉塞感ある舞台や、いくつも存在する部屋の中を探し回りキーアイテムを集めてストーリーを進めていくという流れは、昔の探索重視だった頃のバイオっぽい。しかし昔のバイオらしい怖さがあるのかと言えば、これが全然そうでもない。
例えば、バイオの怖さは限られた物資の中で生き残らなければならないというサバイバル感にあった。ゾンビは銃さえ使えば簡単に倒せるが、用意されている弾薬の数は極めてシビア。弾薬がなくなった瞬間、ゾンビはとてつもない恐怖に変わる。銃以外の唯一の武器であるナイフではほぼ太刀打ち出来ないからだ。残りの弾薬数が常に頭を離れることのないこのゲームは、常にゾンビの恐怖がつきまとうことになる。そこがバイオの怖さだった。
更に大きいのが操作性。バイオは頑なにラジコン操作と呼ばれるキャラの身体の向きを変える時に立ち止まらなければならない操作方法を貫いていたが、この操作性は慣れるまで非常に動かし難く、故にゾンビを避けるのが難しかった。だから必然的に戦闘の必要性が増し、銃の存在感が大きくなっていた。戦闘の比重を重くし、銃以外の武器を極端に弱くしてサバイバル性のホラーをとことん追求したのが昔のバイオだった。
一方、本作のアクションは4以降基盤となった肩越しカメラのTPSシューティングなので操作性はとても快適であり、更に今作は回避の存在や動きながら撃てるようになっているので最近のバイオ(6を除く)よりもアクション性は高い。弾薬の数はちょっとシビアだが、絶望的に足りないわけでもないし、たとえ弾薬が足りなくてもスムーズな操作性と回避コマンドのおかげで簡単に敵を対処できる。一つ一つのエリアは狭いのに扉さえ抜ければ敵が追い掛けて来ないのもそれに拍車をかけている。
要するに銃が使えなくても簡単にやり過ごせるのであまりサバイバルしてる感じがせず、動きのもどかしさや弾薬の制限からゾンビを恐ろしい存在として仕立て上げていた昔のバイオのような怖さは感じられなかった。閉塞感のある雰囲気とビックリ演出でホラーっぽく見せているだけ。
そもそも今作も殆ど二人での潜入となるのでまるで緊張感はなし。コープに対応しているならともかく、サバイバルホラーに常時付いてくる仲間の存在なんていらねぇだろと思う。

アクションゲームとしてはいつも通り面白かった。敵の配置やマップの構造は良く練られており、倒して進むか避けて進むか考えさせられるゲームバランスは相変わらずだし、特にクリーチャーが大量に現れる戦闘では複雑に入り組んだ地形を利用した戦略的な戦いが出来るのも良かった。新たな要素である回避もアクションとしては楽しく、銃を構えながら回避に移れる操作性のおかげで敵の攻撃をサクサク避けられるのが爽快。終盤の激しい戦闘も実にカプコンらしい展開で、クライマックスに向かっている感じがあってテンションが上がった。
しかし6でも思ったが、移動しながら撃てるのは本当にいらない。アクション型バイオの特徴である銃を構えている間動けない仕様は、恐怖の対象とじっくり向き合わせる効果・視界の狭さからくる死角の怖さ・敵がジリジリと詰め寄ってくる緊張感など、ホラー要素を高める様々な効果があり、シューティングシステムがガラリと変わった4と5をサバイバルホラーとして成り立たせる重要なファクターだった。6はアクション寄りという方向性が明確だったので納得出来るが、ホラー寄りであるはずの今作が何故動きながら撃てる仕様を導入しているのか謎。

演出と舞台の閉塞感によりホラー感を醸し出そうとしているが、基本的にやってることは最近のバイオと変わらず。怖い怖いと評判だったので本気でホラーを重視したバイオなのかと思ってただけに残念。
しかしサバイバルアクションとしては安定した面白さを発揮しているので、バイオはこの路線で作り続けてくれればそれで良いや。無理にホラーに戻さなくて良い。どうせホラーのバイオはとっくに形骸化しているんだから。
あと、協力プレイに対応しているレイドモードは難し過ぎて面白かった。