戦闘システムだけはズバ抜けて面白いRPG





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PS2とPS3のアクションRPG。開発はスクウェアエニックス。GBAで出た2Dグラフィックのオリジナル版を3Dグラフィックにリメイクしたもの。

キングダムハーツの魅力の一つは、ディズニーの世界観をモチーフにして作られた立体的かつ仕掛け満載なマップをアスレチック感覚で進めることと、そのマップの中でシームレスに敵と戦える開放的な戦闘にあるが、
元がGBAで作られた今作はマシンスペックの問題もあり、マップはかなりスケールが小さくなっていて仕掛けはなきに等しいし、構造も似たようなものばかりでワールド毎の差別化は殆どなされておらず、不思議なダンジョン並みにテンプレート感が強い。極め付けに、出てくるディズニーワールドは初代で既に登場したものばかりで新規は一つもなく、新鮮さは皆無。
戦闘もシンボルエンカウントになったせいでシリーズのシームレスな戦闘に慣れてしまったあとにやるとテンポが悪く感じるし、シームレスだと通り魔的に敵を倒そうという気にもなるが、エンカウントだと無意識に避けてしまい戦闘に対するモチベーションが上がらない。
ストーリーも2に繋がる前日譚であることを考えれば悪くないが、2をプレイして初めて納得できる話なのでこれ単体で楽しめるかと言われれば微妙。それぞれのワールドで起きるディズニーの話に至っては初代のダイジェスト版に近く、まるで印象に残らない薄さ。
話といいマップの作りといいディズニーの存在感はなきに等しいし、戦闘の開放感もなければ、ストーリーも単体では微妙。キングダムハーツの魅力は殆ど失われてしまっている。
だが、しかし・・・これらの欠点を忘れさせてくれるほど、戦闘システムが素晴らしい。本当に素晴らしい。戦闘の楽しさだけでこのゲームの推進力は保たれていると言っても過言ではない。

基本的なアクションはこれまで通りだが、単純に対応のボタンを押せば良かった今までとは違い、今作の戦闘はカードが指示系統となっている。キーブレードのアクションや魔法やアイテムに至るまで、移動やジャンプや回避アクションを除き、全てカードを使用して発動することになる。これは相手も全く同じ。
カードにはそれぞれ数字が割り振られており、相手より数字が高いカードを出さなければ効果は無効になると言うのがルールの大前提にある。カードは使うごとに減っていき、なくなった分はリロードすることで補充されるのだが、リロードチャージはかなりの時間がかかり、しかもその間は立ち止まってなければならないという使い勝手の悪さ。このピーキーさがまずカードの使い方を慎重にさせる。
また、カードを三枚までストックさせることができる。こうするとストックしたカードの分だけ数字が合体されるし、何より、特定の組み合わせで強力な技を発動できたりもするのでかなりメリットが大きいのだが、
じゃあ適当にストックしていれば良いのかと言うとこれがそうでもない。一枚目にストックしたカードはその戦闘中使えないというデメリットがある(アイテムで復活させることは可能)なので無闇にストックを使っていると段々とジリ貧になる。
とは言え後半はストックを連発しないとまるで追いつかないのだが、ここでまた厄介なのが、0の数字のカードを後だしで出せば如何に相手の数字が高くても無効化してしまうというルール。最初のカードの効果中に0カードを出されてしまうとその時点でストックが無効となってしまう。無効化されるとまた長いリロードをしない限りカードは復活しない。例えば、ケアルのカードを失いたくなくても緊急時には一枚目にストックして無力化される前に使わなければならないという事態が頻繁に起こる。
要するに、このゲームのシステムはリスクとリターンの扱いが非常に上手い。リロードはカードを補充できるが、大変な隙を作る。ストックは強力な効果を発揮するが、最初にストックしたカードは失われる。一枚目のストックにいらないカードを出せば後ろ二枚のカードを温存しつつ高い数字のもとで発動できるが、0カードを出されると発動前に無力化されてしまう。
もう常にリスクとリターンの狭間で頭を悩まされるわけだ。この駆け引きの妙は面白すぎる。ボス戦は本当に熱い。めちゃくちゃ燃える。流石はシステム作りに長けているスクウェアだ。
カードのデッキ作りも面白い。強い数字のカードばかり入れてたらストック技の組み合わせ(特定の合計数字で発動できるストック技もある)が噛み合わなし、かと言ってストックを重視しすぎると0カードに対処できないし、と、ここでも頭を悩まさられる。ストック技のバリエーションは非常に多く、色々な戦略が存在するのでとても奥が深い。

とにかく戦闘だけは面白いのだが、それはスタッフも分かっているからか、このゲームの戦闘比率はヤバい。プレイ時間の7割は戦闘に費やしている。
何故ここまで戦闘ばかりになるのかと言うと、部屋として区切られているマップの扉の先に進むにはマップカードと呼ばれるカードが必要となり、このカードは戦闘終了後にしか手に入らないから。しかも貰えるのは決まって一枚だけ。
先の扉を開けるには求められたカードを差し出さなければならず、青色で数字が1のカードを持ってこいとか言われてそれが手持ちになかった日には、手に入るまで延々とアテのない戦闘を続けなければならないわけだ。これにかなり時間を取られた。しかも狙ったカードを手に入れられる手段は数少ないので全く能動的ではない。完全に作業だ。部屋を抜ける度に地味に長いロードが入るのもイライラを加速させる。
更に恐ろしいことに、終盤になると合計99の数字になるまでカードを捧げろとかいう自暴自棄になりそうなノルマを求められる。9の数字が最高なので最低でも11枚のカードが必要な計算となる。その時一枚もマップカードを持っていなかった俺は99という数字を見た瞬間吐き気がした。いくら戦闘が楽しいと言ってもここまで戦闘ばかり求められると嫌気がさしてくる。
本編が終わると違う主人公のモードも登場し、ストーリーは全く新規で、システムもちょっと変わっているのだが、やってることは全く同じでまたマップカード集めの作業を強いられると思うと眩暈がしたので、やる気が起きずにすぐ止めてしまった。ストーリーは気になるんだけどね。

まとめると、ディズニーのマップはハードの都合上仕方ないとはいえ極めて作りがいい加減で、ストーリーや登場キャラクターも2の前座でしかない。キングダムハーツとしての魅力はかなり薄い。戦闘以外の見所は殆どないと言っても過言ではないが、それ故に戦闘を重視した内容になりすぎているのが最大の懸念。
まぁでも戦闘システムはめちゃくちゃ面白いから、スクウェアの戦闘が好きならやってみる価値はある。やっぱりスクウェアの作るシステムは面白いなぁ。