間に合った



2012年はもうすぐ終わるのに龍が如く5は一向に終わる気配が見えない。ボリュームありすぎ。なのにダレない。素晴らしい!
そんなことはともかく、2012年も豊かなゲームライフを送っていたわけだが、俺が一応贔屓にしているゲームメーカーのスクエニ(主にスクウェアの方)が今年は全くと言って良い程RPGを出してくれなかった。ずっと心待ちにしているヴェルサスも音沙汰なしだった。悲しい。
でもね、スクエニが作ったルミナスエンジンとやらのデモを見て、僕は凄く心を踊らされてしまったわけですね。映像の質はもとより、それよりもスクエニのパッションに惹かれた。過剰なまでに最先端を追求するその姿勢。たった4分半の映像を作るのに半年もかけてしまう情熱。
いくらムービーや映像に力を入れてもゲームとして面白くなければ意味がないというのはまさしくその通りなのだが、一途なまでに自分達のスタイルを貫こうとする姿勢こそがスクエニのスクエニたる所以であり、そしてスクエニのその部分に俺は浪漫を抱いてしまう。自分達のやりたいことをやろうとする意気込みに溢れているからこそ、スクエニのゲームには他のメーカーが作るゲームにない魅力がある。それが最も色濃く現れているのがファイナルファンタジーである。
ソーシャルやブラウザばかりに力を入れてロクにゲームを作ってくれない最近のスクエニだが、今はFF14の失敗を巻き返すのに必死なのだろう。金を得るための行為としては仕方のないこと。金と技術、両輪が揃わなければ渾身の作品は作れない。今世代は完全に失敗で終わった感があるが、次世代のスクエニには大いなる期待が持てるのではないかと思う。そうだといいな・・・

ロクにコンシューマーで働いていないスクエニの話でまとめてしまうのもあれなので、今年最も日本の大手サードメーカーでコンシューマーに力を入れていたカプコンの話をする。
今年の俺はひたすらカプコンのゲームを遊んでいた。数にして12タイトル。中でもドラゴンズドグマにおけるカプコンの気概は素晴らしい。家庭用ゲームが下降線の一途を辿る中にあって、バイオハザードの本編以上に金をかけて新規タイトルを作るその姿勢は、コンシューマーにおけるカプコンの意地を感じた。
ローリスクハイリターンのソーシャルが盛んな今の時代、リスクを冒してゲームを作ることの意味に疑問符が付いているゲーム業界だが、10年ぶりに新規タイトルが国内の初週で30万以上売れるという結果を残し、今の嫌な風潮に一片の風穴を開けてくれた。ドラゴンズドグマの果たした意義はとても大きいものがある。

ゲームはエンターテイメントであり、クリエイティブであり、浪漫である。どんなにスタッフの自己満足な作品でも、クオリティが低い作品でも、ユーザーの求めるものとは乖離している作品でも、作り手の根底の根底の根底にあるのは、あくまでプレイヤーを楽しませたいという気持ちであり、それは一貫としている。大部分が如何にしてプレイヤーに金を払わせるかという主目的で作られているソーシャルゲーム(アプリゲーはまた別)とは、そこが決定的に違う。
ゲームの面白さと、射幸心から来る面白さは比較することすら憚られる。ゲームがギャンブル紛いの金儲け道具に終始してしまうことは、絶対にあってはならない。


・今年気に入ったゲームベスト5

5位 ドラゴンズドグマ(カプコン)



スカイリムに代表される、住人の生活感と多岐に渡る分岐と圧倒的な物量が特徴だったオープンワールドRPGを、カプコン流のアプローチで作り上げてみせたゲーム。そのアプローチ方法とはカプコンが長年ノウハウを積み上げてきたモンスターとアクションであり、そのモンスターのクオリティがとんでもないことになっている。
巨大な体躯のモンスターが、まるで生きてるかのような躍動感で動きまくる衝撃。プログラミングであることを感じさせない自然なモーション。ゴテゴテした外連味が一切ない、ファンタジーとマッチしたデザイン。フィールドを彷徨っている時にモンスターと遭遇した時のワクワク感はとてつもないものがある。
フィールドが狭いとか、世界観が練り込まれていないとか、ワープが出来なくて移動が面倒などの欠点なんて些細なこと。モンスターと出会った時の高揚感が全てを満たしてくれる。ドラゴンと初めて出会った時の感動が未だに忘れられない。


4位 龍が如く5 夢、叶えし者(セガ・龍が如くスタジオ)



所詮はミニゲーム集であり、それぞれの遊びは単体で見れば底が浅く、幼稚で、安っぽさしかないのだが、しかしこの詰め込みっぷりは常軌を逸しており、溢れんばかりのバラエティに富んだ内容に圧倒されてしまう。退屈な筈の遊びが何故かとても魅力的に見えてしまう。飽きっぽい俺が50時間遊んでも未だにダレないとは一体どういうことだ。
1+1を100回ぐらい積み重ねて高次元のエンターテイメント作品に仕上げてみせた、スタッフのサービス精神溢れる渾身の一作。


3位 バイオハザード6(カプコン)



凄まじいスケールを誇る映像。アクションの面白さと弾薬のマネジメントを考えさせられるゲームバランス。コープの楽しさを引き立てる数々のシチュエーション。オンラインの新しい取り組み。やり応えのあるボリューム。
コープの面白さで過大評価してる面は多いにあるが、コープの面白味を引き立てる為の調整がきちんとなされており、コープさえ付けとけばとりあえず楽しんでくれるだろうという、安易なコープ頼みになっていない面も好感が持てる。それに加えてエンターテイメント大作としての面白さがふんだんに取り入れられている。
映像とアクションとオンライン、カプコンの集大成が詰まった大満足の一作。


2位 風の旅人(SCE・thatgamecampany)



文字はなく、言葉もなく、明確なルールもなく、情報もなく、ゲーム的なシステムすらもないこの世界は、圧倒的に純粋で、それ故に美しい。直接語りかけてくるものは何もないのに、胸にこみ上げてくるこの感情は一体何なのだろうか。圧倒的なビジュアルワークと演出が、等身大の感動を伝えてくれる。

そして何と言ってもこのゲームの真骨頂は、仲間の存在にある。PS3をネットに繋いでいると、旅の途中にこのゲームを遊んでいる他のプレイヤーとすれ違うことがあり、旅を共にすることが出来る。
しかし一緒に遊べると言っても、相棒のプレイヤーとボイスチャットやテキストチャットは出来ない。履歴欄にさえ記録されず、プレイヤーのIDもエンディングの最後に表示されるだけ。コミュニケーション手段も殆どなく、唯一の伝達手段は唄のみ。
とてつもなく薄く緩い繋がりでしかないのに、このゲームの最後を迎えた時、まだ別れたくない、もっと一緒に旅をしたい、という思いに囚われて仕方なかった。それは、相手が誰だか分からないからこそ、プレイヤーとしてではなく、旅の途中で出会った相棒として接することが出来たからだ。そこにはオンラインで良くある煩わしい人間関係は一切存在しない。混じりっけない、純粋な感情の交換が実現されていた。
何処に行けば良いのか分からず、共に砂漠で迷走したこともあった。美しい景色の前に足を止めて、並んで眺めていることもあった。極寒の雪山では、互いに寄り添って暖め合ったりもした。
共に困難を乗り越え、コミュニケーションを取っているうちに、相棒と強い絆で結ばれていく確かな感覚がこのゲームにはある。だがこのゲームの性質上、同じ相手とは二度と会えない。
旅とは一期一会。最後の場面は、ゲーム史に残る名場面と言っても過言ではなく、あまりの感動に打ちのめされた。


1位 ダークソウル 深淵のアルトリウス(フロムソフトウェア)



やはりトップは今年もこの作品という事になってしまうんですね。仕方ないね、面白いのだから。もはや語ることすら必要ない傑作。


・今年気に入った映画ベスト5

今年上映の映画だけに絞ると気に入った作品があまりにも少ないので、今年観た作品全てが対象となります。


5位 マネーボール(ベネットミラー監督)



俺が贔屓にしているスワローズと憎き巨人の関係を思わせる、アスレチックとヤンキースのプレーオフ決戦から始まり即刻感情移入。マネーパワーではなく、徹底的に効率性を重視した野球で勝とうとするアスレチックのGMであるビリー・ビーンの姿勢に、スワローズファンの俺は注目さぜるを得ない。
とは言えマネーボール理論はテーマを語るうえでのファクターでしかなく、この映画が言いたいのは古き慣習を壊さなければ抜本的な改革は出来ないという、野球とあまり関係ないものであるが、ビジネスではなく、心からチームを愛してその為に奮闘しているビリーの姿に感動してしまう。
マネーボール理論を散々フィーチャーしておきながら、重要なのはやはり金であるという結末はあまりにも残酷な皮肉。結局のところそれが現実なのか。


4位 映画ドラえもん 新・のび太の鉄人兵団(寺本幸代監督)



不覚にもこれは感動してしまった。ストーリーが純粋に良かった。
映像も鳥肌もの。ロボットが地球に攻撃するシーンはあまりにもスペクタクル。ドラえもんで映像の部分にこんなに力を入れてくるとは思わなかったから度肝を抜かれた。
オリジナルは観た覚えないし、元が傑作だったからこその出来なのだろうが、それを踏まえてもこのリメイクは素晴らしいんじゃないだろうか。


3位 ビッグフィッシュ(ティムバートン監督)



人生は旅であるとはまさにこのこと。
父親の死に際にあって、かつて彼が話してくれた嘘のような経験談を遡って見て行くのだが、これは一人の男のファンタジーな冒険話ではなく、その男の人生の話だ。
誰しも旅をしている。それは人生という旅である。この映画は、旅こそが素晴らしいとして語っているのではなく、人生を旅になぞらえて語っている。そこが素晴らしい。
語っている内容はファンタジーじみていて現実からかけ離れていながら、それは決して視聴者自身に当てはまらないことではない。何故なら旅も人生も本来持つ意味は共通しているからだ。浪漫、果てしなさ、喜び、困難。その全てがこの映画には詰まっている。インパクトのあるファンタジー的な映像で見せてくれることによって、それがとてもストレートかつ鮮やかに伝わってくる。


2位 おおかみこどもの雨と雪(細田守監督)



自己のアイデンティティの確立という使い古されたテーマを、人間と狼のハーフという大胆な設定で掘り下げた傑作。日常の中にファンタジー要素を混ぜようとする細田監督らしいやり方であり、ファンタジーを自然に溶け込ませやすいアニメだからこそ出来る芸当だ。そのテーマに家族の絆という普遍的な愛を絡ませることで、物語に幅を生み、加えてテーマをより強固なものとしている。
狼として生きるか。人間として生きるか。自分のアイデンティティを守るか。家族との生活を守るか。明確な答えは決して存在しないが、悩み抜いて選び取った決断は、無条件で自分にとって価値のあるものだと理解させられる。悩んで、苦しんで、葛藤に葛藤を重ねて自分を作っていく姿に感動してしまった。


1位 カラフル(原恵一監督)



自殺した少年に、違う人間の魂が入ってやり直す話。正直に言うと俺はこの映画を観て涙してしまったが、それはこの作品のテーマとはまた別の部分にあるため、置いておく。
違う人の魂が入ったことによって主人公はそれまでと人間性が全く変わってしまうという設定で、要するにこれは人は変われるんだよというメッセージであるのだが、それは自分らしさを捨てろということを言ってるのではない。
人間には表面に現れない部分で様々な側面があって、それは人前に出せないほどとても嫌な面であったり恥ずかしい面だったりするのだが、それを含めて自分であり、だから人間には色々な面があって当たり前なんだと受け入れられるようになれば、また違った生き方が出来るのではないかと、そう投げかけている。個人のアイデンティティを大切にしながら、その上で人は変われるんだよという可能性を示しているのがとても上手い。これは文句無しの名作だ。



・yata of the year 2012

今年はヤクルト戦をいい加減にしか観ておらず印象が薄いため、ヤクルトの項目はすっ飛ばします。昨年で優勝争いの緊迫感を知ってしまった俺は、一戦の結果で一喜一憂するのは徒労でしかない思うようになってしまった。ずっとヤクルトを応援し続けてきただけに寂しいが、ヤクルトとの距離はこれぐらいが丁度良いような気もする。

この項目は、単純に俺のスピリッツを震わせた作品という、一点の基準で決めています。

3位 ドラゴンズドグマ(カプコン)



ドラゴンと初遭遇した時の衝撃が未だに強く印象に残ってるから3位。書き尽くして特に言うことがない。


2位 カラフル(原恵一監督)



泣いてしまったから2位。書き尽くして特に言うことがない。


1位 風の旅人(thatgamecampany)



今年最も印象的なゲーム体験だったので1位。書き尽くしてもう特に言うことがない。


ではでは、良いお年を。