分かりにくいが面白い意欲作






PS3とXbox360のアクションゲーム。開発はコナミとリベリオン。

呪いをかけられて死ねない身体になってしまった男が主人公のゲーム。
不死身の人間を操れるという宣伝に魅了されて買ったのだが、確かに看板に偽りはなかった。殴られても斬られても爆発や瓦礫に巻き込まれても身体がバラバラになるだけで「左腕を探していまーす」とか言いながら動き続ける主人公に最初は衝撃を受けた。首だけになっても操作可能なゲームはネバーデッドだけだと断言出来る。

これだけ設定がぶっ飛んでるだけあって、ゲームの内容もかなりイカれている。
基本的な攻撃手段は銃撃と斬撃なのだが、あまりにも威力が乏しくそれだけでは中々敵にダメージを与えられない。そこで重要となってくるのが周りのオブジェクト。このゲーム、ドラム缶や石柱や壁やガラスや天井などありとあらゆる背景のオブジェクトが破壊可能で、それに巻き込む事で敵に大ダメージを与えられるのだ。
え?自分も巻き込まれてしまったらどうするんだって?大丈夫です。このゲームの主人公は不死身です。瓦礫が飛んで来ても近くでドラム缶が爆発しても、せいぜい頭が吹っ飛ぶだけで済みます。むしろ自ら腕を引きちぎって投げてオブジェクトの巻き込みポイントに敵を引き寄せたり、自分の頭を投げて起爆したりと、肉を斬らせて骨を立つとはまさにこのこと。
身体のパーツを失うと探して引っ付ける必要があり若干面倒だが、その様子が馬鹿馬鹿しくて滑稽で愉快。ゲージが溜まればワンボタンで一気にパーツを生やすことが可能なのもユーザービリティに割り切ってて◯。
どうあっても主人公はバラバラになる運命にあるが、不死身である特性を活かした男らしすぎるこのゲームデザインは素晴らしいの一言。死を恐れる事なく好き勝手に暴れ回れる感覚は他のゲームでは味わえない心地良さがある。
とは言えゲームオーバーが存在しないわけではない。マップの至る所にチビっこいモンスターが身体のパーツを吸い込もうとちょこまか走り回っており、四肢なら生やすことも可能だが首を吸い込まれると消化されてしまい、死ぬことはなくとも延々と胃の中に取り込まれることとなりゲームオーバーになる。
しかし、たとえ首を吸引されてもタイミング良くボタンを押せば脱出出来るので、実際殆どゲームオーバーになる事はない。ゲームオーバーが無きに等しいので達成感というのは薄いが、それ以上に不死身アクションが新鮮で滑稽で面白いのであまり気にならない。

キャラクターも良い。不死身ジョークが冴えるおっさん主人公とドSな金髪美女の組み合わせはニヤニヤしてしまう。魔王のキャラも面白いし、全体的におバカなノリが漂っていて笑える。馬鹿馬鹿しいゲームの設定と世界観がとても上手くマッチしている。

と、かなりユニークかつ面白いアイディアが詰まったゲームなのだが、実際のところ評判はあまりよろしくない。と言うのもこのゲーム、非常にとっつきが悪いからだ。
通常攻撃である銃撃や斬撃の威力が弱く敵が中々倒れてくれないことにイライラさせられるし、四方から敵が現れるのにロックオン機能がないので狙いも定め辛いうえに、敵は執拗に追いかけてくるので落ち着いて狙いを定めるのも困難。ブレードで立ち向かったとしても数が多すぎるので殴られまくり、頻繁にパーツ探しを強いられることになる。
敵が銃撃や斬撃で中々倒れないのはオブジェクト巻き込みを推奨しているからであり、ロックオンがないのも敵ではなく背景のオブジェクトに目を引かせる為で、執拗に追いかけて来るのは巻き込みポイントへ誘導しやすいための配慮なのだが、そこに気付くまではただ身体がバラバラになるだけのイライラゲーとしか感じられなかった。
オブジェクト巻き込みこそが重要だと気付けば、普段は敵から離れつつ巻き込みポイントを探し、見つけたらそこに敵を誘い込んで一気に殲滅という遊び方がこのゲームのプレイスタイルだと分かるのだが、そこに至るまでが難儀だった。

どんなゲームにも作り手が望んでいる遊び方というのがあるものだが、このゲームはそれが非常に分かりにくい。アプローチが弱いというか、調整が甘いというか、普通にゲームをしているだけでは中々それに気付かない。
例えば、オブジェクトが壊せるという要素がミソなのに、壊せるオブジェクトの印はカーソルの色が変わるだけなので分かりにくいし、実際巻き込んでもどれだけダメージが入ってるのか分からなからないので有効なのかイマイチ確信が持てない。よーく見ると、ピタゴラスイッチのように連鎖が繋がって破壊が破壊を巻き込む仕掛けもあるのだが、よほど注意していないと気付く筈もない。
銃とブレードをメイン武器にしたのも明らかに間違いで、お決まりの武器なので普通はこれを使って敵を倒すものだと思うだろう。まさかこれがオブジェクトを壊す為に用意された装備であるとは殆どのプレイヤーが考えつかないはずだ。
オブジェクトを壊すという、このゲーム最大の要素を全く強調することがないまま、ゲームは進んで行く。

このゲームのプロデューサーはかつてメタルギアのプロデューサーを担当した人で、それを知って合点したのだが、アプローチが弱いように見えるのも、分かりにくい仕掛けも、全てはプレイヤー自身に考えて工夫させるために、あえてあざとく遊び方を見せないように気を付けているんだろうなと思う。
メタルギアがまさにそういうゲームだった。ゲームの方から明確な楽しみ方を示さず、可能性だけをチラつかせ、プレイヤーに工夫して遊んでもらう。ゲームの方から楽しみ方を教えてくれないのでプレイヤーにとってハードルは高いが、創意工夫して遊ぶ楽しみがあった。
だが、メタルギアはステルスでも敵を皆殺しても良かったように様々な解法があり、最悪は麻酔銃とローリングでごり押しが可能だったが、ネバーデッドはオブジェクトに巻き込んで敵を殲滅すること以外、特に答えがないゲーム。オブジェクトの有効性に気が付かなければそれまでではあまりに不親切すぎる。オブジェクトの有用性を示した上でプレイヤーに工夫して遊んで貰えるように作るべきだったと思う。

非常に面白いアイディアのゲームであるし、不死身を活かしたゲームデザインも上手く機能しているのだが、アプローチが弱いせいで必要以上に不当な評価を受け、損をしてしまっているゲーム。
まぁでも不死身という設定の活かし方がちょっと回りくどい気はするね。自分の身体を道連れにオブジェクトに巻き込むというのも面白い発想だけど、もっと分かりやすくダイレクトに不死身を活かす方向に持ってた方が良かったかも。
でも不死身という、ありがちながら形にするのは難しそうな発想を良くここまでのレベルで仕上げたなぁとは思う。変わったゲームをやりたいならオススメ。言い忘れたけど、ゲーム自体は結構単調です。