メタルギアとは自分との戦い






アクションアドベンチャーゲーム。HD版をプレイ。開発はコジマプロダクション。

ご存知の通り、メタルギアとは敵に見つからないように進んでいくステルスゲー。個人的な問題ではあるのだが、このシリーズはどうも楽しみ方が良く分からない。今作は特にそうだ。
スパイものらしく様々なガジェットアイテムやアクションが用意されているが、無音で射撃出来て一撃で仕留めなくても警戒されない麻酔銃が強すぎるというシリーズ代々伝わる特徴のせいで麻酔銃以外使う必要性がないのがまず一つ。
3より前の作品はカメラが固定されていたため敵の位置を確認し辛く、敵に照準を合わせるのも一苦労で一応バランスが取れていたが、3のサブシスタンスからはカメラで全体が見回せるようになり、楽に敵の位置が確認出来るようになってしまいもう完全に麻酔銃の独壇場。これ一つでどうにかなってしまうためゲームプレイが単調になってくる。
しかも麻酔銃で眠らせてばかりいると隠れるも何もないじゃんという気分になってしまいステルスしてる感じがあまり味わえない。じゃあ麻酔銃を縛れば良いじゃんと言う話になり、サブシスタンス版にも旧態のカメラ固定パターンにすることが出来るので、完全に麻酔銃縛らないまでもそっちでステルス楽しめば良いじゃんという話になる。
が、今度はそうすると敵に見つかりまくる。増援がゾロゾロと湧いて銃撃されまくる。俺が下手なのもあるが、3はレーダーの性能が非常に弱いのでステルスが難しいのだ。
警戒アラートが収まるまで隠れ切れば敵の警戒が弱まるという要素もあるが、アラートの時間が無駄に長くてその間待っているのもかったるい。
MGS4やピースウォーカーに慣れた今やると屈み腰での移動がないのも不便。安全策である匍匐移動は、動きがトロ過ぎる上に草むらに入ると画面が草で埋まってしまうため使いづらく、移動するだけでも忍耐力がいる。

こうしてフラストレーションが溜まった末に、俺は最後の手段であるローリングごり押しに手を出してしまう。メタルギアは見つかっても敵の攻撃はそこまで激しくないし追跡も弱いのでゴリ押しが楽なのだ。しかしローリングで敵を吹っ飛ばしながらふと思う。こんなの、全然楽しくないなと。
そうなんだ、結局俺はメタルギアをプレイしてる時はいつも自分と戦ってるんだ。カッコ良くステルスプレイがしたい→しかしそれには忍耐も技量も必要→何回もステルスに失敗する→やる気がなくなりローリング麻酔銃ごり押しになる。毎回このパターンだ。
苦しいがゲームとして楽しい道を選ぶか、楽だがゲームとしてつまらない道を選ぶか、メタルギアをプレイしているといつもこの岐路に立たされる。そして堪え性のない俺は楽でつまらない道を選んでしまう。だから俺はメタルギアが楽しめない。
大体のステルスゲーはステルスの難易度を下げて誘導しているが、メタルギアは自分で縛らないとならない上にいざステルスを楽しもうと思ったらハードルが高い。特に3はそれが顕著だった。

が、そこがメタルギアの良いところでもあるなと思う。様々なアプローチを与え、しかしプレイヤーに明確な楽しみ方を明示するわけでもなく、自分で考えて楽しんで貰う。メタルギアのバランス調整の根幹にあるのは恐らくそこだろう。イマイチ使い道の分からない豊富なガジェットも、プレイヤーに押し付けがましく使わせるのではなく、自分で使い方を考えて下さいとプレイヤーに発想を委ねている。
ゲームの方から楽しみ方を教えてくれないのでハードルは確かに高い。しかしそれ故にプレイヤー自身が創意工夫を凝らして進めていく楽しみがある。俺はその過程を面倒くさいと言ってバッサリ切り捨ててしまっているが、そういうプレイヤーの為にも麻酔銃を強くしてクリアー出来るようにしている。
メタルギアが多くの人に受け入れられている要因の一つはこの懐の広さにあるのだろうなと感じる。

ゲームの舞台となるのは1970年代の冷戦時代。ステレオタイプなスパイガジェットやコスチュームを着替えて風景に擬態するというのは時代考証に合ってて面白い仕組み。一々メニュー画面を開いてコスチュームチェンジするのは面倒だが、このゲームの味でもある。
動物を捉えて食したり怪我を細かい医療道具を使って治癒していく要素も、蛇足気味だがサバイバル感を演出させるという意味で見れば良く考えられたシステムだ。
システムと世界観が見事にマッチしており、よりゲームに引き込まれやすくしているこのゲームデザインはとても素晴らしい。

そしてこのゲーム、シナリオがやけに良く出来ている。
制約の多いゲームでここまでドラマティックなストーリー展開が出来るのは素直に凄い。設定は色々とややこしいが、起承転結がハッキリしているのですんなりと入り込める。
ゲーム部分はサッパリ楽しめなかったが、ストーリーを追っていくのは楽しかった。と言うか殆どシナリオの為に進めていた。

明確な欠点としては操作性が悪い。□ボタン長押しで銃を構えて、□ボタン強く押して射撃とか意味不明すぎる操作性の悪さ。
CQCの操作もこんな感じで、おかげで敵をガードにして狙い撃つ操作が困難。この操作形態は理解に苦しむ。

まぁそんな感じで色々言ったが、結局のところストーリー以外は楽しめなかったので、やはりメタルギアは好きになれない。細かい作り込みや遊び心溢れるアイディアの数々は素晴らしいんだけどね。ステルスゲーなのにステルスゲーとして楽しむまでのハードルが高すぎるのは厳しいよ、やっぱり。
でも最新作のピースウォーカーはかなり良い感じにステルスを楽しめる調整だったので、次回のメタルギアには期待出来るかな。