これぞエンターテイメント




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流石にバイオも飽きてきたので何かゲームでも買うかとわざわざ日本橋まで出向く。
日本橋にはエーツーというゲーマーの都がある。買取は高いし、定価は安いし、中古の種類は多いし、海外のゲームも置いてる、まさに隙のないゲームショップだ。
しかし、エーツーを持ってしても、俺の気をそそるようなゲームが見つからない。PS3の気になるゲームは殆どやり尽くしてしまい、3DSは携帯機ならではのゲームが全然ないから食指が伸びず、PSPはバッテリーが死にかけてるので起動する気が起きない、と、ワガママばかり言ってるから当然だ。
完全な八方塞がり状態であるやたさんの前に、PS2の棚が圧倒的な存在感を見せ付けて現れる。何という膨大なタイトル数だ。これが最強ハードたる所以なのか。今までPS2のゲームはほぼスルーしてきたけど、暇だしやってみるか。
と、物色し始めるのだが、興味が沸くようなタイトルがまるで見つからない。これだけ選択肢が多いと逆に何が良いのか分からなくなってくる。
選ぶなら今世代で種類の少ないRPGだよなぁ。でも、結局一番気になったのが、一度オリジナル版をクリアーしたはずのFF12インターナショナルという悲しさ。やっぱり古いタイトルはイマイチやる気が起きんのよ。
そんな時にひときわ僕の目を引くタイトルがあったんですね。

「シャドウ オブ ローマ」

ほう。ローマの影か。ローマでミステリアスな雰囲気とか素敵やんと思い、手に取る。
お、作ってるのカプコンじゃん。カプコンのアクションは面白いからこれは期待出来るんじゃね、と、更に僕の期待が高まったところで裏面を見る。そこに書いてあるフレーズが素敵すぎて一気に引き込まれてしまった。

「ブルータス、お前もか・・・」

な、なるほどw そういう路線で来たか。 良いよ、そういうの嫌いじゃないよ!

という長い前置きを経てようやく感想に移るのだが、率直に言ってこのゲームは面白い。
冒頭でいきなり重要人物が殺される出だしはそれだけで興味を引かれるし、犯人が誰なのか先が気になる作り。登場人物の誰もかれもが狙いすましたように胡散臭くて怪しい感じが何か火曜サスペンスっぽくて愉快だし、終盤のとって付けたようなどんでん返しもエンタメと割り切って見れば面白い。
余りにも唐突に明かされる黒幕の存在には吹かざるを得なかったけど。ゲーム中では誰なのか明かされないが、どう考えてもクレオパトラです。本当にありがとうございました。総じてコメディっぽく見えるのは気のせいではないだろう。

舞台となるローマの作り込みも素晴らしい。
古代のローマっぽい雰囲気は充分出ているし、細かい所までよく作り込まれているので探索するのが楽しい。ネズミを投げると叫びながら逃げて行く通行人の様子を見るのもまた一興。別に誰も気にしないような無駄な所まで良く作られている。

ゲームの目的はシーザー暗殺の真犯人を見つける事で、プレイヤーはスパイ活動と闘技場での戦闘を求められる。二つのパートを交互に進めていくわけだ。
スパイ活動は殆どパズルのようなもので、決められた工程をこなしていく感じ。街で情報を集めてどうすれば潜入出来るか考えるのが楽しい。ヒントは極端に少ないが、それ故にあらゆる手段を試したくなる。
一応アクション要素もある。自由度がまるでない一本道ステルスで、かなり作りはいい加減。敵の目の前で壺に隠れてもやり過ごせるという、一昔前のゲームかと錯覚してしまう敵のアホさ加減に誰もが注目すること間違いなし。
しかしこれはギャグだと思えば笑い所だと割り切れる。バナナで滑らせて気絶させるとか、女装して敵の目を掻い潜るとか、あざといまでの心音ノイズとか、もうこのパートは完全にギャグの領域。
作りの粗さをギャグで誤魔化すと言えば聞こえは悪いが、プレイヤーを楽しませようという気持ちが伝わってくるから許せてしまう。このパートが本編なわけでもないしね。

このゲームのメインは闘技場でのアクションバトル。観客を盛り上げて、客から武器や回復アイテムを差し入れて貰うというシステムが素晴らしい。
盛り上がれば盛り上がるほど強い武器が投げこまれるのだが、逆に敵に利用されてしまう場合もあり、チャンスのはずが一転窮地に追い込まれてしまうかも知れない緊張感も持ち合わせている。
闘技場と言えばやたらと観客が盛り上がっている印象が強いが、まさかこういう形でゲームに活かしてくるとは。設定的にも、ゲーム的にも、とても秀でたシステムだ。
試合形式がバラエティに富んでるのも良い。特に面白いのが戦車レースで、もう何をやっているのか訳分からんハチャメチャさがとても楽しい。
しかし、全体的にイライラすることが多かったかな。敵は堅いくせしてやたら数は多いし、苦労して倒し切ったと思ったらスコアが足りないからゲームオーバーとかガックリくる。
また、味方と協力するルールも多いが、その味方のAIが前代未聞レベルのアホで、一人で回転刃に突っ込んで刻まれ続けている姿など見てるとキレそうになる。
イライラする部分はまだまだある。敵を投げとばそうとしたり、武器を奪い取ろうとする時に一旦動きが止まってボタン連打を求められるのだが、ここでも普通に判定があって他の敵に邪魔されるのが凄まじくウザい。気持ち良くスープレックス決めさせて欲しい。ロックオン精度がイマイチなのもいただけない。
まぁ、一番イラっとくるのは、観客から投げ入れられた強武器を目の前で敵に奪われて、それでボコボコに殴られることなんですけどね・・・

色々なアイディアを詰め込んだごった煮的な作品で、一つ一つの要素は安っぽいのだが、プレイヤーを楽しませようというサービス精神に溢れており、単体で見るとショボい遊びも、それらがまとまることで高いエンターテイメント作品として仕上がっている。
ゲームの出来自体はそれほど特筆することもないが、遊んでいて素直に面白い、楽しいと思える作品だ。