FFはこのままでいて欲しい






13の感想は前に書いたが、13-2の感想の前置きとして書いた部分が長くなりすぎたので13の感想として上げる。

PS3で出てるRPG。開発はスクエニ。

FFはいつも賛否両論あるが、その中でも13は特に評価が別れた作品だった。
内容を簡単に説明すると、クネクネした細い道をひたすら走って、途中で立ちはだかる敵とひたすら戦って、合間に挟まる無駄にクオリティの高いムービーを眺める。まぁそれだけと言えばそれだけ。
途中で街に立ち寄ることもほとんどなく、あってもゆっくりと観光なんて雰囲気ではなく、町の人と会話したり、店でのんびりと買い物、といったことはできない。
自由度なんてものは当然なく、終盤に申し訳ない程度にデカイフィールドが用意されているだけ。これがストーリーにあんまり絡んでこないから、やり込まないプレイヤーにとっては無駄に広いだけ。
RPGでは当たり前となっている要素を削ぎ落として、徹底的に戦闘とストーリーに特化した究極のレール型RPGだった。

このような極端なゲームデザインになってしまった理由はシナリオの設定にある。
主人公たちが世界を破滅に導く因子という設定で、基本的に政府から逃げてるだけ。故に一度行った場所に戻ることができないし、犯罪者扱いなために街でのんびり過ごすことも出来ない。このため街が殆ど出てこないのだろう。
で、ここまでした結果、ストーリーのデキが良いのかと言うと、これが結構酷い。ストーリーを主眼に置いたゲームなのに、この部分のマズさが致命的だった。
「ただ、そのシーンを無駄に美しいグラフィックで再現したいだけだろ」と言いたくなるような、スタッフがやりたいシーンを詰め込んだだけのつぎはぎストーリー。というより、つぎはぎムービーで、
このゲームは、基本的にNPCとの会話がなく、ストーリーのほとんどがムービーで語られるのだが、そのムービーがつぎはぎなために見ているプレイヤーからしてみれば歪な構造に感じられ、途中からは、主人公たちが一体何のためにその行動をしているのかさえほとんど理解できないシナリオ展開だった。
造語が多いのは良いとしても、世界観が特質的過ぎるのに、その設定が最初の時点では謎な部分が多く、プレイヤー置いてきぼりにしてしまったのも良くなかった。

戦闘は面白い。システムが素晴らしい。
詳しいことは日記に書いてるので省くとして、めまぐるしく戦況が変わるスピーディーさと、操作のシンプルさ、そして見た目の派手さと、同時にこれらの3つを実現しているのは凄い。
しかし、ここでもバランスの調整面でかなりの制限が見られる。
クリスタリウムと呼ばれる成長システムはルートが殆ど一本道でプレイヤーの介入の余地があまりないし、シナリオ進行でレベルの制限がかかり、レベルを上げてゴリ押しすることも出来ない。
更に中盤まではキャラが分散されてパーティーを無理矢理決められるし、リーダーも変更出来ない。
自由度がない成長要素。一本道のマップ。戦闘終了後に全回復する仕様。途中まで変更出来ないリーダー。強制的に決められるパーティー。そして異常に高い難易度。
要するにFF13は「この場面では、こう楽しんで欲しい」という開発陣の意図したプレイに沿うように調整されたゲームなんだよな。プレイヤーは開発者の手のひらの上で踊らされてる感じ。中盤まではプレイヤーの介入できる余地がほとんどない、ある意味究極の一本道ゲーム、それがFF13であると。
まぁ、これは日本の伝統的なゲームデザインであると言えるが、ここまで極端にその方向性を押し進めているゲームを俺は他に知らない。

今でこそ増えてきたが、13が発売した当時のPS3はRPGの数が乏しく、そこでようやくFFの新作が出るとあって、多くの人が超大作のRPGを期待してしまった。これが13にとって最大の不幸だった。結果として、出てきたのは全然RPGの掟を守ってないものだったため、多くの批判が集まってしまうこととなった。
でもね、俺はFFにRPGらしさなんて求めたら駄目だと思うんだよね。常に新しいことをやり、挑戦する。良い意味でも悪い意味でも期待を裏切って、新鮮な体験を提供してくれる。これがFFなんだから。
そういう意味で、13はとてもFFらしいゲームだ。スクエニは見事に期待に応えてくれた。
そしてね、もう何度も言ってることだけど、新しいことを常にやろうとするFFが俺は大好きだ。普通のシリーズ作品はある程度決められた枠組みの中で作られる。そうすれば安定して売れるし、批判も浴びにくいからだ。しかし、FFはシリーズの枠組みに捉われず、良い所も、悪い所も全て一新して毎回内容を変えてくる。常に新しいことを追求するフロンティアスピリッツ溢れる心意気が、強くゲームに現れている。
FFは、生みの親の坂口氏が、これが失敗したらもうゲーム業界から身を引こうという覚悟を決めて製作されたことは有名だ。いわば、背水の陣の覚悟で生まれたゲームだ。
そして今でも根底に流れるものは変わっていない。会社の命運を背負った失敗を許されないタイトルで、ふんだんに金をかけて、それでも新しいことをやろうとする、その気概。
こんなにチャレンジスピリッツのあるゲームは、世界中探してもファイナルファンタジーしかないよ。
変化を嫌う傾向にあるゲーム業界において、FFのような作り方をしてるシリーズは本当に貴重だし、ずっとこのスタンスを続けて欲しいと思う。
この気持ちがFFにある限り、俺はFFを支持し続ける。

ゲームとしてどうなのかと言うと、問題は多くあるが間違いなく面白い。
単純な理由として、このゲームの約5割を占める戦闘が楽しいのが一つ。このゲームの約2割を占めるムービーも見る分には高品質なのが、また一つ。
もう一つの理由は一本道なマップ。一本道というとネガティブなイメージがあるかも知れないが、迷わずにテンポ良く進めるという良い点もある。
迷わない分長いからあれだけど、あまりに綺麗な一本道なものだから、どんどん突き進みたくなるという不思議な感覚に陥った。ロケーションも綺麗でバリエーション豊かだから何となく世界に引き込まれる。
ストーリーも何だかんだ言って先が気になるしね。クリアーまで何も邪魔なく一直線に走れる。
レール型のRPGだと割り切れば、普通に良く出来たゲームだと思う。あとは貰える経験値を増やして戦闘の数を減らし、クリスタリウムにもう少し自由度があれば、かなり印象変わったかな。

まとめとしては、普通のRPGを期待しているのなら間違いなく合わないが、俺のようなFF好きなら問答無用で買うべき。言うまでもなく、もう買ってるだろうけど。
それにしても、これだけ尖っていて、毎回内容も変えてるのに、日本のような保守的なユーザーが多い市場でも普通に売れてしまうのがFFの凄いところだよなー。
FFはこのままでいて欲しい。