前作から何も変わってない




image

海外のRPG。開発はObsidian Entertament。
RPGの概念を覆したとゲーマーに衝撃を与えた「オブリビオン」のエンジンを使って作られている。

海外のスタジオは相変わらずやることがスゲーなー。まず単純に映像が凄い。
果てしなく拡がる広大なフィールド。核戦争後の世界が舞台なのだが、その描写が見事。
瓦礫の山と化した住宅街、家主が骸となっても働き続けるお手伝いロボット、ぽつんとあるブランコ、緑も何もない煤けた大地。言葉では何も語らないが、その全てにドラマの片鱗を感じ取れる。
凄いのはフィールドだけではない。重要人物だけでなくモブに及ぶ全ての住人にAIが用意されていて、それぞれの行動が複雑に絡みあうことで確かな社会が形成されている。
些細なところでは、地面に転がっている雑貨品、世界の実情を補完してくれるラジオ、NPCのシニカルな会話など。途方もなく作り込まれた細かな要素が、説得力のある世界に仕上げている。
そう、この世界は紛れもなく生きている。

その世界で、プレイヤーはとにかく自由に行動出来る。
このゲームの基本プレイは色々なイベントをこなしていくことだが、そのアプローチの仕方はプレイヤーの自由。
メインシナリオは一応あるが、それを進めるか無視するかもプレイヤーの自由。重要な登場人物でさえ殺せてしまうという、とにかく破天荒なゲーム性。
プレイヤーの行動にいちいち応えてくれる懐の広さが堪らない。ゲームの主体はプレイヤーにあると明確に示している。

今作は前作以上にシナリオの幅が広い。膨大な数存在する勢力が今作最大の特徴。
例えば、勢力に加担し好感度が上がれば、様々な頼みを任されたり自分の願いを聞いてくれるようになる。
逆に勢力に敵対して好感度が下がり続ければ、顔を合わせただけで発砲されてしまう。
この要素が素晴らしいのは、どれかの勢力を立てればどれかの勢力を落とし入れることになり、決して全ての勢力に良い顔は出来ないというところ。プレイヤーの行動次第で、勢力図がガラリと変わっていく感覚が面白い。
無論、プレイの仕方によってシナリオの展開も180度変わる。今作はシナリオのスケールがアップし、より自分の行動の影響力を感じ取ることが出来る。

このように、とにかくゲームのクオリティ自体は凄まじい。俺自身、前作のfallout3はハマりにハマった。
だが、今作のニューベガスはどうだったかと聞かれると、微妙だとしか答えられない。

挙げられる理由はいくつもあるが、まず内容がほとんど3と変わらない。
基本的にフォールアウトは、フィールドやダンジョンも風景や背景に代わり映えがなく、
3まではまだ良かったが、それがニューベガスにまで引き継がれていると、さすがにダレてくる。
加えて、無駄に街やフィールドが広いわりに移動速度は遅いし、読み込みは長いし、探索していても楽しさより面倒くささが先立ってしまう。

さらに、RPGで本来重要視するべき点である戦闘が致命的につまらない。
戦闘は、普通のFPSのようにシューティングするスタイルと、敵の動きを止めてズームアップし、APゲージを消費して部位を狙い撃つVATSと呼ばれるスタイルの二種類がある。
FPS好きとRPG好き、どちらの層もカバーしたと言えば聞こえは良いが、実際はどっちつかずで中途半端になってしまっている。
シューティングの出来は根本的に良くないし、VATSには戦略も何もなく、ステータス値と武器で勝負がほぼ決まるので頭を捻る場面は皆無。
敵の種類も少なく、ボスといえる敵もほとんどいないためメリハリに欠け、進んでいる感覚がしない。

次にこれは俺の好みの問題だが、会話が長い、長すぎる。
文章量が異常で読む気が失せてくる。内容自体は面白いが、回りくどい言い回しが多く、簡潔に要点だけを言ってくれと思いたくなる。

そして、このゲーム最大の欠点がバグとフリーズ。
前作も酷かったが、今作はさらに磨きがかかっている。具体的な数字を言うと、30時間プレイして8回フリーズした。
前作の経験から、プレイすればするほどフリーズの頻度が増すのは分かっていたので、ピークに達する前にやめた。
当然、バグも相当量存在する。人が空を飛ぶのは当たり前として、地形に引っ掛かったり、入れるはずの施設に入れなかったり、中には進行不能のバグもあるからタチが悪い。
正直、このレベルで良く販売出来たなと思えるほど。いつものことだから許されるとでも思っているのだろうか。

前作は死ぬほどハマったが、システムやロケーションはおろか、フリーズ・バグ問題さえ改善されてないどころか改悪されている状態に呆れて、今作はすぐにやめてしまった。反省が全く活かされてない。前作から何も変わってない。
確かにクオリティは凄いんだが、プレイヤーを快適に遊ばせようという気配りが全く感じられないのは大問題。

これは、海外のゲームをやるたびに感じることだが、物量や作り込みは凄いし遊びの幅も広いけど、底が浅いんだよなー。
正確に言うと、アクションや戦闘のシステムがつまらない。バランスもおざなりだし。インターフェースにおいては論外。

最近、日本のゲームは海外のゲームと比べて劣るとか色々言われてる。
確かに、クオリティでは海外に及ばないが、オリジナリティ溢れるシステム面に職人芸のバランス、洗練されたインターフェースなど、優れた面もたくさんある。日本のディベロッパーは、そういう面をとことん突き詰めていけば良いと思う。
クオリティの海外、オリジナリティの日本。みんな違ってみんな良い。

話はズレたが、ニューベガスは洋ゲーの良い部分と悪い部分が見事にくっきりと現れた作品。
洋ゲーに抵抗がある人はまず合わないし、最近の型にハマったRPGに飽きたなーって人にはうってつけ。