やっぱりSRPGは趣味じゃない








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PSPのSRPG。開発はスクウェア・エニックス。オリジナル版は未プレイ。

「伝説のオウガバトル」を作った、松野氏による続編。
ある意味でSRPGの趨勢を決めてしまった罪作りな作品。特にクォータービューの高低差のあるフィールドは当時衝撃的だっただろう。
旧来の平面マップに比べ、見栄え・視認性・戦略性、どれをとっても秀でており、これ以後多くのSRPGがタクティクスタイプのフィールドを採用するようになった。
そんなタクティクスオウガが15年の時を経てリメイクされたので、SRPGがあまり好きではない俺も買ってみた。
結果的にやはり好きになれなかったが、SRPGとしては本当に良く出来てる。
高低さを生かした戦略性、多彩なクラスに、膨大な数の装備。
このゲームは陣営関係なしにWTの数字が小さい順に行動でき、WTはクラス、ターン中の行動の有無だけでなく、装備の種類でも関わってくるため、単に補正値が高い装備にすれば良いというわけでなく、装備選択に深みが増した。
行動の有無でも順番が決まってくるので、とりあえず適当に石投げとくかは厳禁。一つの行動選択も疎かに出来ない緊張感がある。

しかし、注意深くやってるつもりでも、弓が高い段差に引っ掛かったり、魔法の軌道上に味方がいて誤射してしまうことが、このゲームは多発する。
そこで効果を発揮するのが、本作から追加された50ターンまで遡れるCHARIOTシステム。
操作ミスをなかったことに出来るうえ、SRPG初心者の救済策にもなっている。
デメリットがほとんどないので、使いたくないという硬派な人でもつい使ってしまいたくなるのが欠点か。俺も最初は使わないつもりだったが、一回使ってしまうと味をしめて使わずにはいられないようになってしまった。

育成面では本作からユニットごとではなく、クラスに経験値が割り振られるようになり、レベル上げの面倒くささが極力省かれている。分かりやすく言うと、クラス自体にレベルが存在し、例えばナイトのクラスがLv8なら途中から雇用しようが、ナイトならLv8となる。要するにユニットごとに育てる必要がなくなった。
これだとクラス内ならどれも同じ能力のキャラになると思われがちかもしれないが、ユニットごとに習得出来るスキルというものがあって、これを弄ることで差別化を計ることに成功している。
キャラは一定の条件で死んでしまい使えなくなるのだが、あるアイテムを使うことでスキルを他のキャラに引き継ぐことが出来るので、今までの育成が無駄になることはない。

そして何と言っても見所なのは多種族の思惑が複雑に絡んだシナリオ。登場人物の行動や発言が実に生々しくて良い。
ウザイだけのカチュア、主人公に反発したいだけのヴァイス、基本的にみんなキチガイで魅力的。
モブキャラや一回しか登場しないような敵にも、細かい設定が用意されていたりして、ただの無機質なものではなく、一人一人に命が吹き込まれており、シナリオがさらに味わい深いものに仕上がっている。
分岐も豊富に用意されていて、それもちょっと変化するだけでなく、プレイヤーの選択で物語の筋がガラっとしまう。エンディングも複数用意されており何周でも遊べる。
加えて膨大なやり込み要素に隠しアイテム。
バトル専用の拠点もあり、基本的に難易度が高いゲームだが、さらに凶悪な戦闘が待っている。

このように、作品自体は素晴らしい出来なのだが、俺がSRPGを好きになれない理由の大部分が、このゲームにも現れている。
まず、一回の戦闘に時間がかかりすぎ。敵のAIが嫌らしい意味で賢くてイライラする。もうちょっと積極的に攻めて来てほしい。
逆に味方のAIは頭悪過ぎ。カチュアさん、後ろに籠もりすぎです。全てのキャラをAIにできるが、とても任せられたものではない。

攻撃も外れすぎ。体感だが、表示されている命中率より明らかに外れたり、ガードされる頻度が多い気がする。10連続で攻撃がヒットしなかった時は、PSPをぶん投げかけた。故に命中アップのスキルは必須。
でもって、序盤は複数を対象にした攻撃がほとんど使えない。おかげで戦闘が間延びするし地味になりがち。

そしてインターフェースが酷い。マップがオブジェクトでごちゃごちゃしてて、魔法や弓の射程感覚が掴みにくいのに、射程範囲を表示しながらの移動が出来ないし、敵の攻撃の範囲も確認出来ない。
それにパッと見て敵味方の区別が付かない。HPバーを敵味方で色付けして常時表示して欲しかった。もちろん切り替え有りで。
他に技の演出をカット出来ないし、ショップの使い勝手も最悪。未だにパラメーターの変更値が確認出来ないとか、何年前のゲームだよ。確かにユニット数が膨大だからまとめて表示は難しいかもしれないが、試着ぐらいさせろ。
俺はSRPGで唯一ディスガイアは好きなのだが、その理由はこういう部分が洗練されてるから。
それに投げるシステムのおかげで戦闘が膠着状態になりにくい。
インフレした数字とやり込み要素に目を奪われがちだが、あのゲームの真の魅力は洗練されたインターフェースと大胆な戦略が取れるシステムにある。そこがツボにはまった。


タクティクスオウガは良い意味でも悪い意味でも、SRPGのルーツ的な作品として納得の内容だった。
これを他がマネし、それを俺がプレイしてSRPGのイメージが形成されたわけだから、タクティクスオウガを好きになれる要素はそもそもなかったか。
SRPG好きなら見逃せない作品なのは間違いない。