800円








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PS3のアクションゲーム。開発はALVION。

何はともあれ、目を引くのがこのゲームの値段。PSNのダウンロード専売で800円という脅威の値段設定。
「800円のゲームならPSNにいくらでもあるじゃないか」と思われるかも知れない。俺も始めるまでは所詮値段相応のクオリティだろと思っていた。
だが、始めてすぐにそれは間違いだと気付いた。このゲーム、作り込まれ過ぎている。

まず、映像がパッと見て、中々凄い。印象的で油絵っぽい質感のグラフィックはリアリティーとはベクトルが違うが、とても味わいがある。
そして、その質感で描かれたボス達がデカイ。どのボスも、HPを半分程度削ると演出が入り、本気を出してくるのが燃える。
雑魚の物量も凄い。数が多いだけでなく、種類も豊富だ。
さらに作り込まれているのがステージ。細部に至るまで手抜きがなく、特に飛空船のステージは、こんなところまで作ってあるのかと感心した。
それでいて、自分が操作するキャラのアクションも良くできてる。技は4種類のスキルを自由に切り替えられ、オーラを消費することで強力になったりと、種類が豊富ながら戦略性もある。
動きも機敏でサクサク動き、壁に張りついて走り回れたり、はたまた飛べるようにまでなるのだから動かしていて単純に楽しい。
さらにリプレイ性も高い。ボスは好きな順番で戦えるのだが、倒す順番によってスキルの入手順も変わってくるしボスの強さも変動する。
つまり、5種類のボスそれぞれに5つの難易度があるわけだ。そこにスキルの有無も加わってきて何周でも遊べる仕上がりになっている。


ゲーム開発費の高騰が叫ばれている昨今、このクオリティで800円は脅威という他ない。
もちろん、800円に落とし込めるよう工夫して作られている。
6体のボスを倒していくゲームなのだが、そのボスに至るまでの過程はごっそり省かれ、ステージを選択したらいきなりボスと対峙するという方式がまず一つ。他に、登場人物の数を徹底的に絞ったり拠点が殺風景だったりと、ポイントとなる点以外は清々しいまでに手を抜いている。その分ボスとステージの作り込みに力を注げるわけだ。

800円という値段設定は非常に上手い。
この値段だと、割り切った作りでもプレイヤーは「まぁ、800円だからな」と納得せざる得ないし、見た目が良いから注目を集めれるし、何より気楽に落としてもらえる。
少ない資金で、いかにクオリティの高いゲームを作るか。
開発のアルヴィオンは、自分の会社が中小企業だとわきまえてゲームを作っているのが良く分かる。資金も人手も乏しいのに、無理にクオリティの高いゲームを作ろうとして、ゲームどころか会社まで破綻してしまった例がいくつもある中、実に理に適った上手い作り方を見せてもらった。

が、ゲームとして単純に面白くないのが最大の欠点。
ボス戦が基本的に大味。雑魚を倒してオーラ消費攻撃連打のワンパターン。これはまだ良いが、強攻撃するにも、回復するにも、オーラが必要なので、ボスから逃げ回って雑魚を倒してる時間のが長く、ボスと戦ってる感じがあんまりしない。
また、操作性が悪い。回避を出そうとしたら、ガードしちゃった!ってことが、かなり頻発する。
あと気になるのはカメラ。壁際に行くとキャラをあっという間に見失う。

カメラと操作性がダメでボス戦がつまらないという、アクションゲームとしてはとても褒められた出来ではない。
が、安くて作り込みは凄いという歪な構造の作品。
800円分の価値があるのは間違いない。